クリニック開業手順/スケジュール
クリニックのスタッフ採用
※スケジュール表はあくまでも目安です。
開業される地域や科目によって変更になる場合があります。
診療科目や内容によって、必要となるスタッフの人員数は異なります。適正な人員配置や採用の方法はコンサルタントなどに相談し決定していきましょう。
7-1.人員計画の策定
当初の事業計画を策定した際に、看護師、看護助手、医療事務などの人数と賃金については概要を決めているはずです。
ここでは近隣の医療機関様の賃金情報を詳細に調べ、引けを取らない形で賃金水準を決定していきます。
賃金設定でどんな層を狙うか決める
賃金には差があるので、どのゾーンを狙うかが大きなポイントとなります。
給与を低めに設定すれば、応募者数も少なくなり、それなりの人しか採用できないことはほぼ決定してしまいます。
運良く素晴らしい人材を採用できることもあるかもしれませんが、開業後にスタッフ問題が起きないようにするためにも、おすすめはできません。
開業後1番の悩みがスタッフ問題
開業後の一番の悩みは、スタッフの問題(※スタッフ問題が一番の悩みへ)です。
ご勤務されていた際は、診療に神経を注ぎ、患者様だけに集中していれば良かったですが、開業後は経営者として、スタッフにも気を遣わなければなりません。
ただ怒鳴り散らしていたら、スタッフはどんどん辞めてしまうし、そうすると残っているスタッフのモチベーションも下がってしまいます。
医師が朝クリニックに来たら、受付事務が来ていない。
電話をしたら2人揃って「辞めさせてください。」
実際にあった話です。
そうならないためには、適切な賃金の設定を始め、スタッフの不満を抑えるような工夫し、優秀なスタッフを採用できるようにしましょう。
高めに設定したからといって優秀な人が応募してくれるとも限りません。
しかし、低めに設定するよりは、はるかにいい人材に恵まれる可能性があります。
必要以上に高くする必要はありません。
賃金は、本当に地域格差が大きいので、コンサルタントを活用したほうが良いでしょう。
7-2.クリニックのスタッフ採用面接
看護師や医療事務、技師などの採用面接は初めてという医師が多いでしょう。
初心に立ち返り、どんな開業を目指されているのか?どんな診療を考えているのか?
それにぴったり当てはまるスタッフを面接で選ぶのです。
応募書類だけでは、分かりません。
実際に立派な経歴を持っているのに、面接の場で会ってみると、とても患者様の前に出せないと思われる人が面接に来ることも、稀にあります。
面接の際、応募者の方に聞きたいことをまとめましょう
面接を行う前に質問事項をまとめておくとよいでしょう。
質問事項には、過去の職歴で気になる点や志望理由は当然入れてください。
それ以外にも、何で前職を辞めたのか(または、辞めようと思っているのか)、求職者が考えている長所や短所なども質問しておくと良いと思います。
いくつかはずせないポイントがあるので、開業の相談に乗ってくれる方によく聞いてみましょう。
客観的な判断指標を作りましょう
また、採点表も作っておくと便利です。
履歴書と質問表だけだとメモしか残らず、後で選考で迷ったとき客観的な資料がないこととなってしまいます。
評価を数値に変えて残せる採点表の作成は重要です。
スタッフの面接は、医師ご自身で行うとしても、家族以外の人に入ってもらうことをお勧めします。
クリニックの経営のためにも、患者さん目線で面接してもらうことができるからです。
責任が伴うので、コンサルタントの中には面接の準備をするだけで、採用面接と選考はすべて医師独りで行ってもらおうとするところもあります。
これも、事前に採用に同席してもらえるのか確認しておいたほうが良いと思います。
採用の募集広告が十分でないと、面接した結果、とても採用できる人がいなかったということもあります。
その場合は慌てず、すぐに次の採用広告を打ちましょう。
無理して採用しても、結局辞めてもらう羽目になります。
時間がない?そうです。
ですから、早めに募集広告をして再募集も視野に入れなければなりません。
ただし、看護師さんの採用は簡単ではありません。
それでも、一度目の採用面接で患者様の前に出せないと思ったら不採用の勇気を持ってください。
看護師さんも開業までには採用できるはずです。
看護師さんの採用はどこでも苦労しますが、優秀なコンサルタントなら必ずいくつかの方法を持っているはずです。
7-3.応募書類整理
まず、応募書類の選択などはコンサルタント会社を活用することをおすすめします。
とても手間がかかる作業なので、医師の人件費に見合いません。
履歴書等を整理してもらった後、コンサルタントと一緒に検討し、書類選考をします。書類選考の後の面接の手配も、コンサルタントに任せましょう。
面接の時間設定のコツは、応募者の面接時間割をあらかじめ調整することです。
とても簡単なことですが、初めてやろうと思うと、なかなか時間の調整がつかず、何日にも分けて面接することとなってしまいます。
その結果、印象が薄くなってしまい、後のほうに面接した人か、優秀ではないにしてもインパクトの強い人を採用することとなってしまいます。
また、面接場所も、クリニックの内装工事が間に合わないのが普通ですから、どこかクリニックの近くで、静かでコストもかからない場所を確保することとなります。
7-4.面接セッティング
採用面接のセッティングの一番の肝心なところは、日時の設定です。
応募者は現在勤務中の方も多いですから、勤務に差し障らないであろう日時を設定します。
また、現在の勤務状況によっては、たまたまその日が時間が取れないということもあるので、予備日もセッティングします。当然、医師の時間もゆっくりと取れる日を選定します。
開業の2ヶ月弱前には面接のセッティングを
面接のセッティング時期については、最低2ヶ月前に設定しなければなりません。
スタッフには、現在勤務している医療機関に、退職時期の1ヶ月前くらい前に退職の意思を伝えてもらわなければならないことと、開業する半月前からスタッフ研修を始めなければならないためです。
そう考えると、採用決定通知書は、開業予定の1ヵ月半前には出さなければなりません。
つまり、猶予をみて開業の2ヶ月弱前には面接のセッティングをしなければならないのです。
祝日や、休日の都合で、それでもぎりぎりとなってしまうことがあります。
特に、10月開業は注意を要します。 ちょうどお盆があるので、その前に面接日を設定し、お盆前には採用決定通知を出せる状況にしておかないと、とんでもないことになります。
妥協してはいけないポイントです
面接セッティングは、開業後のクリニックの命運を左右する仕事です。
この段階で無理があると感じたら、思い切って開業日を後送りしましょう。
ここであせって、適当な体制で開業するなら、1ヶ月休んでも優秀な人材を確保し、十分研修をした上で開業できるようにしたほうが、開業後のストレスが少なくなるだけでなく、診療報酬の伸びにも大きな差が出ます。
7-5.スタッフ採用決定通知(不採用通知)
欲しい人材には早く採用通知を
スタッフの採用が決定したら、なるべく早く採用通知を出しましょう。
就職を検討して面接に来た方は、他のクリニックにも応募されている可能性があります。
こちらで良いと思うスタッフは、他のクリニックでも採りたいと思う人材ですので、決定の通知は早めに出さないと他に採用されてしまう可能性があります。
採用が決定したら、内定通知書をお渡しして、退職の手続きに入ってもらいましょう。
すでに退職されている方は問題ないのですが、転職を考えている方は、勤務中ということもあります。円満退職してもらうためにも、採用決定し、早めに退職に向けた準備を進めてもらうことが必要です。
不採用者への対応が後の評判に影響します
不採用とする方への心配りは、採用以上に注意が必要です。
医療機関に応募される方は、比較的開業予定地のお近くにお住まいの方が多いと思います。不採用とした時に、納得してもらえないと、批判勢力を作ってしまうことになります。
評判をとろうと開業するのに、不評を買ってはつまらない話です。
書類選考で不採用とする場合は文書で丁寧に対応されれば問題ありませんが、特に注意しなければならないのが、書類選考を通過し面接選考でご縁がなかった方への対応です。
不採用の通知はやはり文書によることになると思いますが、例えば、文書を送る際に500円分の商品券を一緒に送るなど、クリニックの批判勢力を作らない工夫が必要になります。
7-6.スタッフ研修
まず、内覧会の日から逆算して、少なくとも2〜3週間前にはスタッフ研修を行います。
スタッフ研修初日は、院長先生から開業に対しての思いやクリニックの診療コンセプトなどを説明していただき、それぞれスタッフの自己紹介をしてもらいます。
スタッフ研修の際に看護師さんと相談し、必要な医療備品や消耗品の発注を行います。医療事務の方々には事務用品の発注をしてもらいます。
また、電子カルテの使い方や医療機器の取り扱い方法の説明が医療機器の業者の方からあります。
さらに、白衣やサンダルなど、スタッフの初顔合わせの後にも、スタッフの意見によりちょっとした備品などを購入することとなります。このあたりは、スタッフ同士があれこれ楽しく選べるところとして任せておきましょう。
クリニックのマニュアルやノウハウを外部に蓄積しておきましょう
スタッフ研修で大切なのは、クリニック内のマニュアル作り・ルール作りを少しずつ行っていくことです。
一般的に、クリニックにはマニュアルがないため、ノウハウが人の中に蓄積されるだけとなってしまっています。
したがって、人の入れ替わりがあってもノウハウがスタッフ間で継承できるようにしておかないと、経営に支障をきたすこととなります。
しかし、落ち着き始めるころにはスタッフの退職の話が出ていたりするものです。
できるだけ早く着手し、スタッフのミーティングで対応を標準化して、後輩の育成に役立つマニュアルを作る協力を依頼されることをお勧めします。
インシデント・アクシデントレポートの作成を徹底しておきましょう
クリニック経験者のスタッフを獲得できたとしてもインシデント・アクシデントレポートを知らないスタッフもいます。
特に、医療事務の方の間での認知度は低く、長年医療事務に従事していたとしても知らない事が多いです。
看護師も病院勤務時代は提出していたが、クリニックでは経験がないケースも比較的多いため、クリニック開業当初よりしっかりルール化することが大切になってきます。
特に、開業当初は覚えたての電子カルテや医療機器で患者さんと接することになります。
そのため、どうしても患者さんの待ち時間が長くなり、ヒヤリハット等が起こりやすいです。
院長への報告の徹底はもちろんですが、再発防止のためにどうすべきかクリニック内で決めるためにも、共有する仕組みを当初より作っておくことが必要になります。
7-7.電子カルテ研修
電子カルテについては、電子カルテの会社のインストラクターが来て院長先生、医療事務を中心としたスタッフの方で別々に指導をしてくれます。
その前に、医師と電子カルテのメーカーの間で、電子カルテの入力を使いやすくするために処方キットや検査キットなどを作りこんでおかなければなりません。
これは、メーカーの方がタイミングや様々な指導をしてくれますので、なるべく早めにという指示だけしておけば足りるでしょう。
電子カルテの研修の際には、患者さんの保険証忘れや、お財布忘れなどの際にどのような対応をするかを決めなければなりません。これは、会計業務にも影響しますので、対応が分からなければ税理士さんに聞いてみるのも必要です。
開業後の記帳、会計業務に連動しますので会計事務所の意見も大切です。
ただし、会計事務所のおかげで患者さんの待ち時間が長くなってしまわないようにバランスの取れたルール作りと、手順を決めることが必要です。
できれば、この部分だけでもマニュアル化しておいた方が良いでしょう。