医院継承開業(買い手)
こちらでは医院開業を既設の診療所を買い取ることで継承し行う場合について、その基本的な考え方やメリット・デメリット、注意点などをご案内しております。
医院継承開業をとりまく現状・抑えるべきポイントについてはこちらをご覧ください
まずはじめに、医院開業の環境についてと、継承という選択肢について考えてみましょう。
クリニック院長の高齢化が進み、引退する開業医が増える
厚生労働省の「平成28年 医師・歯科医師・薬剤師調査の概況」によれば、医師の数は年々増加しており、また同時に診療所(クリニック)においては医師の高齢化も進んでいることがわかります。
引き継ぎ手がいないために閉院するクリニック
高齢や健康上の問題でどうしてもクリニックを閉鎖するしかなくなった場合、これは地域医療にとっても大きな打撃になってしまいます。
それまで診療所にかかりつけで通っていた患者さんたちは新しく診てもらう先を探さなくてはいけませんし、働いていたスタッフも次の就職先を見つけなくてはいけません。
科目によっては医療過疎が原因になり住む人が離れていくような影響すら考えられます。
そんなとき、地域医療への貢献を胸に診療所を継承開業してくれる先生が求められるのです。
継承開業のメリット
コンセプト決めから場所探しと進めていく新規開業に比べて、継承開業には以下のようなメリットがあります。
- 初期費用をカットできる(借入額が少なくて済む)
- すでにクリニックの認知度がある
- 早期の黒字化が可能
- 開業までの期間を省略できる(2ヶ月)
- スタッフの引継ぎも可能
初期費用をカットできる(借入額が少なくて済む)
継承開業の場合には、その診療所に既にある医療機器をそのまま使用することができますので、開業初期にかかる費用を削減することができます。
すでにクリニックの認知度がある
完全新規開業では、まずクリニックを認知してもらうことに多大な労力がかかります。広告宣伝や口コミの広がりなどにコストをかけなければいけません。
しかし、継承開業の場合には、既に診療所が地域に認知されているので、新規開業に比べ認知度における優位性が高くなります。
早期の黒字化が可能
上述のようにコスト削減の機会が多いため、診療報酬からの費用割合が抑えられ、早期の黒字化への移行もしやすくなります。
開業までの期間を省略できる(2ヶ月)
継承による開業では、場所探しや建築、内装工事などが大幅に短縮可能です。
そのため実際に診療を始めるまでの期間も省略ができ、早期開業が実現できます。
スタッフの引継ぎも可能
継承による医院開業では、診療所で働いているスタッフさんをそのまま雇い入れるということも可能です。
もちろんお勤めのスタッフさんたちとの話し合いが必要ですが、新規開業時にオープニングスタッフとして求人媒体などに費用を投入して募集する必要がない場合もあります。
また、新規開業時には未経験の方の採用もありますが、継承にてスタッフさんを引き継ぐという場合には、クリニックでの医療業務になれたスタッフさんたちを得ることができますので、教育コストの削減も見込めるでしょう。
看護師さん、また科目によっては理学療法士(PT)や臨床心理士など専門性が高く採用も難しいスタッフをそのまま引き継いでの継承開業も大きなメリットです。
継承開業のデメリット
継承開業も良いことばかりというわけではありません。新規開業ではない分気をつけなければいけない点や、デメリットも以下のようなものがあります。
- 老朽化した設備の入れ替え
- 前院長の医療過誤のリスク
老朽化した設備の入れ替え
継承開業においては既設の診療所を使うことになるのですが、もちろん歴史の長いクリニックですと建物の老朽化もあります。
また、使用している医療機器に関してもそもそもの型が古くなっていたり、診察台や待合スペースのソファシートまで、いろいろな院内設備を取り換えなくてはいけないという場合もあります。
なんでもそのまま使えるというわけではなく、取り換えるためのコストも考えておくようにしましょう。
また、先生の行いたい診療によっては、それを実現できる医療機器を新たに購入する必要が出てくるかもしれません。
前院長の医療過誤のリスク
先生が直接かかわっていない、前院長の患者さんとのトラブルやスタッフさんとの問題なども残ってしまう可能性があります。
継承後に先生もしくは法人を相手に訴訟などが起こってしまうと大変です。
前院長すら把握していなかった負債や契約が後から出てくるというようなリスクもありますので、とにかく徹底した診療所の調査・評価が必要になります。
数字としてわかりやすい売却価格だけでなく、信用などの付加価値の面をしっかりと評価しなくてはいけなくなるのも、継承ならではのコストと言えます。
いずれにしても、こうした面は専門のコンサルタントや税理士の協力を得ることが望ましいです。
カルテの管理については早期に確認・相談を
診療科目によらず、カルテの管理に関しては継承を考える際には早期に確認しましょう。
昔からの診療所では、電子カルテへの切り替えを行わずに紙カルテを使用し続けていることもあります。
電子カルテへの移行作業などは大変な手間がかかることが予想されますので、早いうちに継承を考えている先のカルテの管理法について確認し、移行が必要だという場合には、専門の医院継承コンサルタントへご相談下さい。