【2024年診療報酬改定】科目ごとの改定ポイント
2024年の診療報酬改定において、各施設基準の要件が発表されました。
ここでは、科目ごとにおける診療報酬改定のポイントをまとめてお伝えしてまいります。
全科目共通
ベースアップ評価料(新設)
医療従事者の人材確保や賃上げに向けた取り組みに一つとして、「ベースアップ評価料」が新設されることとなりました。
2024年度に+2.5%、2025年度に+2%のベースアップを行うための特例的な対応として、注目を集めております。
参考
医療情報取得加算(新設)
現行の「医療情報・システム基盤整備体制充実加算」が名称変更し、点数が見直されます。
初診時の点数が減算される一方で、3ヶ月に1回は再診時に算定が可能となります。
あわせて、マイナ保険証の利用促進に向けて、保険証の利用率(初診・再診)が2023年10月から5%以上増加した医療機関等に増加率に応じた支援金を支給することも発表されております。
参考
医療DX推進体制整備加算(新設)
オンライン資格確認により取得した診療情報・薬剤情報を実際に活用できる体制を整備していること、また、電子処方箋及び電子カルテ情報共有サービスを導入し、医療DXに対応する体制を確保していることに対する評価が新設されました。
医療DX推進体制整備加算・医療情報取得加算について詳しくはこちらをご覧ください。
内科
外来感染対策向上加算
外来感染対策向上加算では、新型コロナウイルスに限らず、新興感染症拡大時に必要な対策が講じられるよう、恒常的な対策へと見直されることとなりました。
現行の月1回に限り6点加算に加えて、必要な対策を講じたうえで、発熱やその他感染症の患者に対して初診を行った場合にはさらに20点加算となります。
あわせて、算定にあたり、下記の要件が追加されました。
- 受診歴の有無に関わらず、発熱その他の感染症を疑わせるような症状を呈する患者の受け入れを行う旨を公表し、受け入れるために必要な感染防止対策として動線を分けるなどの対応を行う体制を有していること
- 第二種協定指定医療機関または医療措置協定を結んでいること
なお、第二種協定指定医療機関について、2024年3月31日時点で外来感染対策向上加算の届出を行っている医療機関は2024年12月末まで経過措置があります。
生活習慣病管理料
生活習慣病の増加に伴い、効果的かつ効率的な疾病管理及び重症化予防の取り組み促進のために、生活習慣病にかかる項目について見直されることとなりました。
生活習慣病管理料においては、検査や注射、病理診断を包括する生活習慣病管理料(T)と検査等を包括しない(U)へと分けられることとなっております。
生活習慣病管理料(T)
現行の生活習慣病管理料は、生活習慣病管理料(T)にあたります。
各疾患において40点増加となり、点数は下記の通りとなります。
現行 | 改定後 | |
---|---|---|
脂質異常症を主病とする場合 | 570点 | 610点 |
高血圧症を主病とする場合 | 620点 | 660点 |
糖尿病を主病とする場合 | 720点 | 760点 |
算定にあたっては、以下の要件が新しく追加されました。
- 診療ガイドライン等を参考として疾病管理を行うこと
- 長期処方及びリフィル処方箋の交付について、対応可能である旨を院内の見やすい場所に掲示すること
- 多職種(歯科医師、薬剤師、看護師、管理栄養士等)連携を望ましい要件とし、かつ、糖尿病患者への歯科受診を推奨すること
なお、現行の月1回以上の総合的な治療管理を実施するという要件は廃止され、医療機関にとって負担となっていた療養計画書についても簡素化されることとなっております。
具体的には、検査・問診項目が減少し、再診時に患者の署名が省略可能となるほか令和7年より運用開始が予定されている電子カルテ情報共有サービスを使用した場合または血液検査結果を療養計画書とは別に手交している場合、血液検査項目の記載が不要となります。
また、患者の求めに応じて、電子カルテ情報共有サービスおける患者サマリーに療養計画書の記載事項を入力した場合は、療養計画書の作成・交付が完了しているものとみなされることとなっております。
生活習慣病管理料(U)(新設)
検査料等を包括しない生活習慣病管理料として、生活習慣病管理料(U)が新設されました。
生活習慣病管理料(U)では、疾患によらず一律333点を月に1回算定できることとなっております。
算定に関する要件は、生活習慣病管理料(T)と同様です。
また、生活習慣病管理料(T)を算定した日の属する月から起算して6月以内の期間においては、生活習慣病管理料(U)は算定できないので注意が必要です。
特定疾患療養管理料
対象疾患から、糖尿病・高血圧疾患・脂質異常症が除外されることとなりました。
上記の疾患を主病とする場合は、生活習慣病管理料(T)または(U)での算定が求められることとなります。
また、特定疾患処方管理加算1が廃止となり、特定疾患処方加算2についても56点に減算されます。
地域包括診療料・地域包括診療加算
かかりつけ医機能を評価する地域包括診療料・地域包括診療加算は、かかりつけ医機能の強化などの観点から、要件が見直されることとなりました。
「介護支援専門員及び相談支援専門員からの相談に適切に対応することが可能であること」、「患者の状態に応じ、28日以上の長期の投薬を行うこと又はリフィル処方箋を交付すること」について院内掲示及びウェブサイトへの掲載することなどの要件が追加されました。
あわせて、下記の通り点数が変更となります。(地域包括診療料は点数の増減がありません。)
現行 | 改定後 | |
---|---|---|
地域包括診療加算1 | 25点 | 28点 |
地域包括診療加算2 | 18点 | 21点 |
短期滞在手術等基本料1
対象手術等の入院外での実施状況を踏まえ、手術内容によっては、点数が大幅に下がることとなります。
小児食物アレルギー負荷検査 、水晶体再建術(縫着レンズを挿入するもの)等は、これまでと点数に変わりはありません。
ガングリオン摘出術 、手根管開放手術、内視鏡的大腸ポリープ・粘膜切除術、尿失禁手術(ボツリヌス毒素によるもの)等は、点数が以下のように変更となります。
現行 | 改定後 | |
---|---|---|
(1)麻酔を伴う手術を行った場合 | 2,947点 | 1,588点 |
(2)(1)以外の場合 | 2,718点 | 1,359点 |
短期滞在手術等基本料1について詳しくはこちらをご覧ください。
在宅持続陽圧呼吸療法指導管理料
在宅持続陽圧呼吸療法(CPAP)に関する指導管理を行った場合に算定できるものです。
今回の改定では、オンライン診療により指導管理を行った場合にも218点が算定できることとなりました。
なお、算定にあたっては、情報通信機器を用いた診療の届出を行っている必要があります。
整形外科・リハビリテーション科
疾患別リハビリテーション料
これまでのリハビリテーションでは、実施者の職種による区分はありませんでした。
ですが、今回の改定では実施者の職種(PT、OT、医師など)で区分されることになりました。
疾患別リハビリテーションの実施者ごとの訓練実態の把握を目的としています。
点数については、リハビリテーション実施者の職種に関わらず同一となります。
リハビリテーション計画提供料について
また、介護保険との連携強化も求められています。
医療機関からのリハビリテーション実施計画書の提供が半分以下の現状を踏まえ、介護保険の通所リハビリテーション事業所等によるサービス利用へ移行する場合や、他の保険医療機関等によるリハビリテーションの提供に移行する場合、移行先の事業所へリハビリテーション実施計画書等を提供することが義務化されました。
それに伴い、リハビリテーション実施計画書を文書により提供した場合に限り算定が可能だったリハビリテーション計画提供料は廃止されることになりました。
精神科・心療内科
通院精神療法
60分以上の診療、30分未満の診療を行った場合の評価が見直されることとなっております。
現行 | 改定後 | ||
---|---|---|---|
初診日に60分以上の診療 | 精神保健指定医 | 560点 | 600点 |
精神保健指定医以外 | 540点 | 550点 | |
30分未満の診療 | 精神保健指定医 | 330点 | 315点 |
精神保健指定医以外 | 315点 | 290点 |
なお、30分以上(初診の場合は30分以上60分未満)の診療において、点数の変更はなく、精神保健指定医による場合は410点、精神保健指定医以外の場合は390点となります。
情報通信機器を用いて行った場合の評価(新設)
現行では、初診・再診ともにオンライン診療は可能ですが、通院精神療法の算定はできませんでした。
今回の改定では、精神保健指定医が実施する場合に限り、情報通信機器を用いて実施した場合の評価が新設されることとなりました。
なお、「オンライン精神療法を実施する医師や医療機関については、精神障害にも対応した地域包括 ケアシステムに資するよう、地域における精神科医療の提供体制への貢献が求められる」とされており、算定にあたっては、原則常時対応可能な体制などの基準を満たさなくてはなりません。
また、過去1年以内の期間に対面診療を行ったことがある患者のみが対象となります。
早期診療体制充実加算(新設)
初回の受診から一定期間以内に通院精神療法を行った場合の加算が新設されました。
精神保健指定医による情報通信機器を用いた診療と同じく、地域における精神科医療の提供体制(時間外対応等)への貢献が要件として求められております。
また、算定にあたり服薬管理や必要に応じて医師意見書の作成、健康診断や検診の受診勧奨や、予防接種に係る相談への対応が求められます。
心理支援加算(新設)
心的外傷に起因する症状を有する患者に対し、医師の指示を受けた公認心理師が対面による心理支援を30分以上行った場合、初回算定日の属する月から起算して2年を限度とし、月2回に限り250点を算定することが可能となりました。
児童思春期支援指導加算(新設)
児童・思春期の精神疾患患者に対する外来診療の充実を図る観点から、20歳未満の患者に対して、多職種が連携して患者の外来診療を実施した場合の評価が新設されることとなりました。
算定にあたっては、下記の要件を満たす必要があります。
- 児童思春期の患者に対する当該支援に専任の保健師、看護師、理学療法士、作業療法士、言語聴覚士、精神保健福祉士又は公認心理師が2名以上かつ2職種以上配置されており、そのうち1名以上は児童思春期の患者に対する精神医療に係る適切な研修を修了した者であること
- 医療機関が過去6か月間に初診を実施した20歳未満の患者の数が、月平均8人以上であること
- イ 60分以上の通院・在宅精神療法を行った場合:1,000点 (最初に受診した日から3月以内に1回限り)
- ロ イ以外の場合
(1)最初に受診した日から2年以内:450点
(2)(1)以外の場合:250点
小児特定疾患カウンセリング料
発達障害、児童思春期の精神疾患の支援を充実する観点から、要件及び評価が見直されることとなりました。
あわせて、オンライン診療の評価が新設されることとなりました。
医師による診療の場合、月の1回目が500点、月の2回目が400点だったものが、下記の通り、分類され変更となります。
- イ 医師による場合
(1)初回:800点
(2)初回のカウンセリングを行った日後1年以内の期間に行った場合
@ 月の1回目:600点 A 月の2回目:500点
(3)初回のカウンセリングを行った日から起算して2年以内の期間に行った場合((2)の場合を除く。)
@ 月の1回目:500点 A 月の2回目:400点
(4)初回のカウンセリングを行った日から起算して4年以内の期間に行った場合((2)及び(3)の場合を除く。):400点
公認心理師による場合は、200点と変更はありません。
なお、算定要件は以下の通りとなります。
- 小児科又は心療内科を標榜する保険医療機関において、医師又は医師の指示を受けた公認心理師が、療養上必要なカウンセリングを同一月内に1回以上行った場合に、2年を限度として月2回に限り算定する。ただし、特定疾患療養管理料、通院・在宅精神療法又は心身医学療法を算定している患者については算定しない。
- 情報通信機器を用いて 行った場合は、イの(1)、(2)の @若しくはA、(3)の@若しくは A若しくは(4)の所定点数に代えて、それぞれ696点、522点若しくは435点、435点若しくは348点 若しくは348点を算定する。
小児科
小児科外来診療料
新型コロナウイルスの検査の取扱いの変更及び処方等に係る評価体系の見直し等を踏まえ、評価が見直されることとなりました。
以下の通り、点数が変更となります。
現行 | 改定後 | ||
---|---|---|---|
@ 処方箋を交付する場合 | 初診時 | 599点 | 604点 |
再診時 | 406点 | 410点 | |
A 処方箋を交付しない場合 | 初診時 | 716点 | 721点 |
再診時 | 524点 | 528点 |
あわせて、小児科外来診療料及び小児かかりつけ診療料を算定している医療機関では、「小児抗菌薬適正使用支援加算」の算定が可能となっておりました。
今回の診療報酬改定において、対象疾患に急性中耳炎、急性副鼻腔炎が追加されました。
小児かかりつけ診療料
小児に対する継続的な診療を一層推進する観点から、要件と評価が見直されました。
現行 | 改定後 | |||
---|---|---|---|---|
小児かかりつけ診療料1 | @ 処方箋を交付する場合 | 初診時 | 641点 | 652点 |
再診時 | 448点 | 458点 | ||
A 処方箋を交付しない場合 | 初診時 | 758点 | 769点 | |
再診時 | 566点 | 576点 | ||
小児かかりつけ診療料2 | @ 処方箋を交付する場合 | 初診時 | 630点 | 641点 |
再診時 | 437点 | 447点 | ||
A 処方箋を交付しない場合 | 初診時 | 747点 | 758点 | |
再診時 | 555点 | 565点 |
なお、算定にあたっては、指導内容に以下が追加されることとなりました。
- 発達障害の疑いがある患者について、診療及び保護者からの相談に対応するとともに、必要に応じて専門的な医療を要する際の紹介等を行うこと
- 不適切な養育にも繋がりうる育児不安等の相談に適切に対応すること
施設基準には、「小児科外来診療料を算定していること」及び「発達障害等に関する適切な研修及び虐待に関する適正な研修を修了していることが望ましい」ことが追加されました。
産婦人科
一般不妊治療管理料
不妊症の患者に係る診療実施件数要件を、医療機関単位の基準から医師単位の基準へと見直されることとなりました。
新規開業時において、医療機関としての実績が求められていたため、開業後数ヶ月間は一般不妊治療管理料の算定ができませんでしたが、今回の改定により、医師に不妊症の患者に係る診療実績がある場合は、開業時から届出が可能となります。
また、算定にあたっては、生殖補助医療管理料と同様に、国への情報提供に協力することが要件に加わりました。
参考
- 厚生労働省:「令和6年度診療報酬改定の概要(医科全体版)」