医療措置協定とは?
新型コロナウイルス感染症の世界的な流行により、地域医療や医療物資の確保など、医療業界におけるさまざまな問題が浮き彫りとなりました。
こうした課題を踏まえ、感染症拡大時に必要な対策が講じられるよう、都道府県と医療機関が医療措置協定を締結し、2024年4月より施行されることとなっています。
ここでは、既に開業されている先生に向けて、医療措置協定とは何かという点について説明してまいります。
医療措置協定締結の背景
冒頭でもお伝えいたしましたように、新型コロナウイルス感染症により、病床確保の困難さや医療人材の確保などさまざまな問題が浮き彫りとなりました。
そこで、あらかじめ地域で議論を行い、感染症拡大時に必要な対策が講じられるよう、準備を行うことが重要であるとの認識がなされてきました。
このような背景から、都道府県と医療機関が機能と役割に応じた協定を締結し、感染症発生時に、協定に基づいた医療を提供する仕組みを整えることが、令和4年12月に感染症法等の改正において法定化されました。
この協定が「医療措置協定」といわれるものです。
参考
医療措置協定で求められる役割
医療措置協定は、病院・診療所(有床・無床)・薬局・訪問看護事業者が対象となります。
では、協定を結ぶことによって、各医療機関等には何が求められるのでしょうか。
求められる対応は、以下の通りです。
- @ 病床の確保
- A 発熱外来の対応
- B 自宅療養者等に対する医療の提供
- C 後方支援(感染症対策を行う医療機関に代わり、感染症以外の患者に医療を提供すること)
- D 人材の派遣(感染症対応を行う医療機関に医師や看護師等を派遣すること)
医療機関においては、上記5つのうち1つ以上を実施することとなっています。
参考
指定要件について
病床の確保を実施する医療機関は「第一種協定指定医療機関」、発熱外来の対応、自宅療養者等への医療の提供を実施する医療機関等は「第二種協定医療機関」として指定され、公費負担医療の対象となります。
ここでは、無床診療所が対象となる第二種協定医療機関の指定要件について説明してまいります。
第二種協定指定医療機関(発熱外来)の基準
発熱外来を実施する医療機関の指定要件は以下の通りです。
- 当該医療機関に所属する者に対し、最新の知見に基づく適切な感染の防止のための措置その他必要な措置の実施が可能であること。
- 受診する者同士が可能な限り接触することがなく、診察することができること等の院内感染対策を適切に実施しながら、外来医療を提供することが可能であること。
- 新型インフルエンザ等感染症等発生等公表期間において、都道府県知事からの要請を受けて、外来医療を提供する体制が整っていると認められること。
第二種協定指定医療機関(自宅療養者等への医療の提供)の基準
指定要件は以下の通りです。
- 当該医療機関に所属する者に対して、最新の知見に基づき適切な感染防止等の措置を実施することが可能であること。
- 新型インフルエンザ等感染症等発生等公表期間において、都道府県知事からの要請を受けて、外出自粛対象者に対してオンライン診療等の医療を提供する体制が整っていると認められること。
参考
感染症等発生時の流れ
感染症の発生から流行初期(公表から3カ月程度)までは、特定感染症指定医療機関及び第一種・第二種感染症指定医療機関が中心に対応を行います。
感染症指定医療機関とは、厚生労働大臣または都道府県知事から指定を受けている医療機関になります。
今回の医療措置協定によって指定を受ける医療機関等は、感染症の公表から約3ヶ月以降より順次対応することとなっており、公表から6カ月以内には、すべての協定指定医療機関が対応することとなっています。
なお、2024年1月現在、補助金や診療報酬による財政支援が検討されています。
発生初期 | 流行初期 | 一定期間経過後 | |
---|---|---|---|
第一種・第二種感染症指定医療機関 | 〇 | 〇 | 〇 |
協定指定医療機関等 | (〇) | 〇 |
参考
- 厚生労働省:令和5年度第1回医療政策研修会「新興感染症発生・まん延時における医療について」13頁、56頁
必要な対応を確認しましょう
ここまで医療措置協定について説明してまいりました。
スケジュールについては、2024年3月中に各都道府県と医療機関が協定を締結し、4月1日より施行と提示されています。
また、自治体によっては医療措置協定についての説明会を実施するところもございますので、そのような説明会に参加してみるのも内容理解に役立ちます。
まずは、各都道府県からクリニック宛てに届いている案内資料の確認や説明会への参加等で内容を理解するなどして、準備を進めるようにしましょう。