クリニックのDX化の全体像:開業医が知るべき効率化のポイント
【更新日】2025/01/27
近年、医療業界においてもDX化が急速に進み、注目を集めています。
DX化は、診療効率化だけでなく、患者様への利便性や医療の質向上にも直結しており、クリニック運営にも欠かせません。
ここでは、クリニックでのDX導入事例を交え、メリットや導入時の注意点について説明してまいります。
DX化推進によって解決できる主な課題
医療DXは、少子高齢化や感染症流行などの社会的課題への対応として注目されていますが、それだけではありません。
DX化によって、クリニックの運営面でもさまざまな課題を解決できます。
スタッフの業務負担軽減
例えば、予約システムや自動釣銭機の導入によって、電話対応や会計業務の削減につながり、スタッフの負担が大きく軽減されます。
特に昨今では、医療事務スタッフの採用が難しく、求人をかけても集まりにくい状況が続いています。
そのため、ツールの導入によって、効率化を図ることはクリニック経営において重要となってきます。
患者様の待ち時間削減
DX化は診療効率を上げるだけでなく、患者様の院内滞在時間を短縮にもつながります。
スムーズな受診によって満足度を高め、口コミや再診率の向上といった間接的な収益増加も期待できます。
DX化導入例
では、クリニックの受診フローに沿って、DX化による具体的な導入例をみていきましょう。
予約
WEB予約・WEB問診システム

患者様が時間や場所を問わず簡単に予約できるシステムは、今や多くのクリニックで導入されています。
予約システムの導入により、効率的に予約管理ができるだけでなく、患者様の待ち時間短縮や感染症対策としても有効です。
さらに、WEB問診システムを併用することで、患者様が事前に症状を入力し、医師が診察前に内容を把握できるため、スムーズな診療につながります。
導入にあたっては、診療科目や患者様の特性に応じた適切な予約システムを選択することが重要です。
その他、機能の過不足がないか、操作性が直感的かどうかもあわせて確認しましょう。
チャットボットの活用
診療時間外でも患者様からの基本的な質問に自動で回答できるチャットボットを導入するクリニックが増えています。
チャットボットを活用することで、診療時間外でも基本的な問い合わせ対応が減り、事務スタッフの負担軽減につながります。
患者様にとっても、診療内容や予約方法について気軽に確認できるため、利便性が高まるでしょう。
導入後は運用状況を定期的に見直し、より良い患者様対応ができるよう改善を図ることも大切です。
LINEやメールを活用したフォローアップ
LINEを診療予約のツールとして活用するだけでなく、休診や代診の情報、診療内容に関するお知らせを配信するクリニックもあります。
例えば、インフルエンザの予約情報や花粉症シーズンの到来を知らせる配信は、患者様にとってタイムリーな情報提供となり、来院促進効果が期待できます。
さらに、患者様との身近な接点を持つことで、治療や受診の継続につながる可能性も高まるでしょう。
導入にあたっては、配信内容が適切であることを確認すること、個人情報の管理やプライバシー保護を徹底することも欠かせません。
受付
オンライン資格確認

2023年度からオンライン資格確認の導入が原則義務化されました。
このシステムでは、受付に設置されたカードリーダーを使用して、患者様の保険資格をオンラインで確認できます。
オンライン資格確認を導入することで、以下のようなメリットが期待できます。
- 受付業務の負担軽減
- 顔写真による本人確認の精度向上
- 保険資格の正確な確認
- 医療の質向上
特に、医療事務の負担軽減や受付業務の効率化は、慢性的な人材不足を抱えるクリニックにとって欠かせません。
導入時には、対応するカードリーダーの機能や操作性も確認しておくことが重要です。
診察
電子カルテ
電子カルテは、業務効率化と診療の質向上に欠かせないツールです。
現在では、以下の形式が主に使用されています。
オンプレミス型 | 院内サーバーでデータを管理する形式で、セキュリティが高く、インターネット接続に依存しない点が特徴です。一方、初期費用やメンテナンスコストが高くなる点が課題として挙げられます。 |
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クラウド型 | インターネットを介してデータを管理する形式で、初期費用を抑えられ、どこからでもアクセスできます。システム更新が自動で行われるなどの利便性がありますが、安定したネット環境が欠かせません。 |
近年では、クラウド型が推奨されており、予約システムや会計システムと連携可能なものが多く提供されています。
この仕組みによって、データの一元管理が可能となり、情報入力ミスの減少にもつながっています。
電子カルテを選ぶ際には、クリニックの診療内容や運用体制に合ったシステムを選ぶことが重要です。
過剰な機能はかえって運用を複雑化させるため、必要な機能を精査し、ベンダーのサポート体制や操作性も確認しましょう。
参考
- 厚生労働省:「病院の情報システムに関する現状と課題について」
オンライン診療

診療内容に応じて、オンライン診療を実施しているクリニックもあります。
遠方にお住まいの方や育児・介護、仕事などで通院が難しい患者様にも対応でき、継続的な診療を提供することが可能です。
また、感染症が流行する時期でも、人との接触を避けながら診療を受けられるため、安全性の向上にもつながります。
ただし、オンライン診療はすべての診療科に適しているわけではありません。
クリニックの診療内容や患者様の特性を考慮し、適切なかたちで実施することが重要です。
また、システムを選ぶ際は、セキュリティ体制、患者様にとって操作しやすいかもあわせて確認しましょう。
AIによる画像診断
他院との差別化として、AI技術を活用した画像診断装置を導入するクリニックもあります。
AIを用いた画像解析は、医師との二重チェック体制を実現することで、見落としのリスクを軽減できるほか、診断スピードの向上にもつながります。
導入を検討する際は、診療科目に適したAIシステムの精度やコスト、運用体制をしっかりと確認しましょう。
他施設との共有
厚生労働省が推進する医療DXでは、医療機関間でのデータ共有を通じ、患者の診療情報や健診情報の共有が進められています。
後ほど説明する電子処方箋や診療情報提供書の標準化により、施設間での情報交換が効率化され、医療サービスの質や安全性の向上が期待されています。
参考
- 厚生労働省:「医療DXについて」
会計
自動精算機の導入
自動精算機を導入することで、会計業務の効率化が図れます。
現金の受け渡しや計算ミスがなくなり、スタッフの負担軽減や業務精度の向上につながるでしょう。
また、患者様の診察後の待ち時間を短縮できる点も大きなメリットです。
診察後の待ち時間はクレームにつながりやすいと言われているため、待ち時間の削減は、患者様の満足度向上にもつながります。
導入を検討する際は、クリニックの規模や患者様の特性に合った機種を選び、操作性やメンテナンス体制も確認しておくことが重要です。
キャッシュレス対応

キャッシュレス決済の需要が高まる中、クリニックでも対応を進めることで患者様の利便性向上が期待できます。
最近では、予約時にクレジットカード情報を登録することで、診察終了後に自動で決済が完了するシステムもあります。
このシステムにより、患者様の待ち時間がさらに短縮され、満足度向上につながります。
キャッシュレス対応を検討する際は、クリニックの患者層や診療内容に合った決済方法を選び、コストや導入サポートの有無も考慮しましょう。
電子処方箋
2023年1月から運用が開始された電子処方箋は、紙の処方箋に代わりオンラインで処方情報を管理できる仕組みです。
処方情報の一元管理が可能になり、医師と薬剤師間の連携がスムーズになります。
その他、電子処方箋導入には、以下のようなメリットがあります。
- 処方ミスの防止
- 診療・調剤プロセスの効率化
- 医療の質向上
ただし、電子処方箋を利用するには薬局側が対応している必要があり、周辺の薬局が対応していない場合は運用が難しくなる点に注意が必要です。
導入を検討する際は、システムの操作性やサポート体制、患者様の利便性向上にどの程度寄与するかを事前に確認しましょう。
導入時の注意点
DX化ツールを導入する際には、クリニックの規模や診療内容に合ったシステムを選ぶことが重要です。
全ての機能が揃ったシステムを導入しても、必要以上に複雑化し、かえって運用が煩雑になることがあります。
以下のポイントを踏まえ、慎重に検討しましょう。
初期投資とランニングコストのバランス

DX化ツールは初期費用が高額になる場合がありますが、長期的には業務効率化によるコスト削減効果が期待できます。
例えば、自動精算機や電子カルテの導入はスタッフの業務負担軽減や患者満足度向上につながるため、長期的にみると間接的な収益増加にもつながります。
また、保守費用や定期的なシステム更新などのランニングコストも事前に計算しておくことが重要です。
ベンダーのサポート体制
導入後のトラブルや不具合に備え、ベンダーのサポート体制を確認しましょう。
また、導入時の初期設定やスタッフへの操作説明など、現場の負担を軽減するための支援を行ってくれるところもありますので、あわせて確認すると良いでしょう。
操作性の確認
システムが複雑すぎると、スタッフが使いこなせず、導入効果が半減してしまいます。
誰でも直感的に操作できるシステムを選ぶことが重要です。
現場でのスムーズな運用が可能な状態を整えましょう。
患者様への周知
例えば、WEB予約システムやキャッシュ決済を導入する場合は、予約方法や会計の流れについて、院内掲示やホームページでわかりやすく案内する必要があります。
さらに、実際に運用してみて、現場の声を聞き、適宜運用フローを見直すことで、システムの効果を最大限発揮することができます。
サイバー攻撃への対策

特に患者情報や診療記録などの機密性の高いデータを扱うクリニックでは、サイバー攻撃によるデータ流出やシステム障害を防ぐための対策が不可欠です。
ベンダーが提供するセキュリティ機能や対応体制を確認し、定期的なソフトウェアのアップデートやアクセス権限の適切な設定なども徹底しましょう。
また、万が一のトラブルに備え、データのバックアップ取得や緊急時の対応プランの策定、スタッフのリテラシー教育も併せて行うことをおすすめします。
クリニックDX化を成功に導くためのポイント
ここまでクリニックのDX化について、具体的な導入例を交え説明してまいりました。
DX化は単なる業務の効率化にとどまらず、患者様の満足度向上やクリニック全体の運営基盤の強化にもつながります。
なお、医療現場においては、人が対応すべき部分と、機械に任せて効率化できる部分を見極めることが重要です。
予約や会計業務はDX化ツールで効率化しつつ、患者様の細やかな説明やフォローはスタッフが行うことで、クリニック全体のサービスの質を向上させることができます。
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さまざまな相談を受け付けております。初回相談は無料となっておりますので、お気軽にご相談ください。