医療DXとは?
〜医療DX令和ビジョン2030についても解説〜
昨今、業界問わずさまざまなところで、「DX化」が注目を集めています、
医療業界においても同様で、2022年に「医療DX令和ビジョン2030」と呼ばれる医療DX化を推進する提言がなされているほか、2024年の診療報酬改定内でも医療DXの推進が掲げられています。
その一方で、医療DXという言葉はよく耳にするようになったけれど、具体的に何を指すのかまではよくわからないという先生もいらっしゃるのではないでしょうか。
ここでは、医療DXについてわかりやすく説明してまいります。
医療DXとは
そもそもDXとは、「Digital Transformation(デジタルトランスフォーメーション)」の略称で、デジタル技術によって、社会や生活などの形を変えることを指します。
医療におけるDXとは、保険・医療・介護の各段階において発生した受診や診療、治療などのデータを活用し、医療従事者の業務やシステム、データ保存の共通化などを通じて、国民の予防を促進し、より良質な医療を受けられるよう、社会や生活のかたちを変えることと定義されています。
具体的には、オンライン資格確認やマイナポータル、電子カルテの活用など、診療報酬DXを通じて業務やシステム、データ保存の標準化などを推進しています。
医療DX推進の背景
では、なぜ医療DXを推進していくことが求められているのでしょうか。
医療DX推進については、以下のような背景があります。
少子高齢化社会への対応
まず挙げられるのが、日本社会が少子高齢化に直面しているという点です。
高齢者の医療ニーズが増加しており、国民の健康増進や切れ目なく質の高い医療を提供することがますます求められてきています。
医療分野のデジタル化が進むことで、個人の保健医療データが一連の流れとして時系列で把握することが可能になります。
また、国民自ら保健・医療情報へ簡単にアクセスでき、必要に応じて医療機関や薬局にもそれらの情報が共有されることで、効率的かつ効果的な医療の提供が期待できます。
感染症拡大時の対応
医療DX推進のもう一つの背景に、感染症拡大時などに、迅速に必要な対応ができる体制の構築が求められているという点があります。
昨今の新型コロナウイルス感染症への対応を踏まえて認識された課題として挙げられており、平時からデータ収集を迅速に行うこと、データ共有を通じた医療の見える化を推進することなどが急がれています。
このようにDX化を推進することで、医療を効果的に提供・享受できる仕組みを作っていくことで、国民の健康生活が抜本的に改善されることが期待されています。
参考
- 厚生労働省:「医療DXについて」
医療DX令和ビジョン2030とは
冒頭でもお伝えいたしましたが、2022年には「医療DX令和ビジョン2030」という医療のDX化、医療情報の有効活用を推進する提言がなされました。
医療DX令和ビジョン2030では、3つの骨格が提示されています。
全国医療情報プラットフォームの構築
全国医療情報プラットフォームとは、オンライン資格確認システムのネットワークを拡充し、レセプトや特定健診情報、予防接種、電子処方箋等の情報を、必要なときに必要な情報を共有・交換できる全国的なプラットフォームをつくるという施策です。
情報の一元化により、より質の高い医療の提供が見込まれています。
2024年度中には、電子処方箋の普及に努めるとともに、電子カルテ情報共有サービスを構築し、共有する情報を拡大していく見込みです。
また、介護保険や予防接種などの公費負担医療や医療費助成などにかかるマイナンバーカードを利用した情報連携を実現するとともに、感染症拡大時においても必要な情報を迅速かつ確実に取得できる仕組みの構築を行っていくとしています。
引用
- 厚生労働省:「全国医療情報プラットフォーム」
電子カルテ情報の標準化
医療機関同士などでデータ交換や共有をスムーズに行うべく、電子カルテの標準化が掲げられています。
2022年3月には、3文書6情報が厚労省標準規格として採択され、現在も標準規格化の範囲拡充が進められています。
上記に加えて、今後は緊急時に医療機関が患者の必要な医療情報を速やかに閲覧できる仕組みの整備にも取り組んでいくとしています。
また、標準規格に準拠したクラウドベースの電子カルテについては、2024年度中に開発に着手し、遅くとも2030年には、概ねすべての医療機関において、患者の必要な医療情報を共有するための電子カルテ導入を目指しており、必要な対応が検討されています。
診療報酬改定DX
診療報酬改定に伴う業務負荷の軽減のため、診療報酬の算定と患者の窓口負担金計算を行う「共通算定モジュール」の開発が進められています。
2026年度の診療報酬改定で本格的に提供を開始する予定となっており、共通算定モジュール等を実装した標準型電子カルテの提供により、医療機関のコストを削減することが見込まれています。
また、診療報酬改定を円滑に行うべく、診療報酬改定の施行を後ろ倒しが行われました。
実際に、2024年度の診療報酬改定では、6月1日からの施行となっており、システムベンダーの作業集中を解消するほか、医療機関側の作業ミスや後戻りを減らすという目的もあります。
参考
- 厚生労働省:「データヘルス改革・医療DXの進捗状況について」
- 自由民主党政務調査会:「医療DX令和ビジョン2030」提言
最新情報をキャッチアップしましょう
ここまで医療業界におけるDX化推進について説明してまいりました。
2024年の診療報酬改定でも骨子の一つとして挙げられているほか、「医療DX推進体制整備加算」が新設され、医療機関においてもDX化の動きが求められているといえるでしょう。
クリニック経営にあたって、こうした改革にも柔軟に対応していく必要があります。