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在宅医療(往診・訪問診療)の開業資金・診療報酬・リスク

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在宅医療(往診・訪問診療)の開業資金・自己資金・年収

在宅医療クリニック開業という選択肢

高齢化の進展とともに、「住み慣れた自宅や施設で最期まで暮らしたい」という患者・ご家族のニーズは年々高まっています。

その中核を担うのが在宅医療であり、外来中心のクリニック開業に加えて「在宅医療に特化したクリニック」「外来+在宅のハイブリッド型クリニック」という選択肢を検討する先生が増えています。

コンセプト設計:外来併設か、在宅専業か

在宅医療での開業を考えるとき、最初に決めておきたいのが「外来と在宅を組み合わせるか」「在宅医療に特化するか」というコンセプトです。

外来併設か在宅専業かによって、必要なスタッフ構成、連携先、診療時間の組み方、さらには取得を目指す施設基準も大きく変わってきます。

在宅医療のみを実施する医療機関のポイント

在宅医療のみを実施する医療機関として指定を受けるためには、次のような要件を満たす必要があります。

  • 無床診療所であること。
  • 在宅医療を提供する地域をあらかじめ定め、その範囲を患者・家族に周知していること。
  • 定めた地域内で、医学的に正当な理由なく往診・訪問診療を断らないこと。
  • 外来診療が必要になった患者に対応できるよう、同一地域内に協力医療機関を複数確保していること。
  • 通常診療時間内に相談を受け付ける連絡先を明示し、緊急時にも連絡が取れる体制を整えていること。

これらの基本的な考え方は、令和8年度診療報酬改定後も継続しており、在宅医療専門クリニックを開設するうえでの前提条件といえます。

【参考】
厚生労働省「在宅医療のみを実施する医療機関に係る保険医療機関の指定の取扱いについて」

在宅療養支援診療所という選択

在宅療養支援診療所(いわゆる「在支診」)は、在宅で療養する患者に対して24時間365日、連絡体制と往診・訪問看護の提供が可能な診療所として位置づけられています。

自院単独だけでなく、他の医療機関や訪問看護ステーション等と連携して体制を構築することも認められており、在宅医療に積極的に取り組む診療所の一つのモデルとなっています。

24時間365日体制は本当に必要か

在宅医療を行う場合、必ずしも全てのケースで24時間365日の対応が求められるわけではありません。

一方で、在宅で看取りまで含めた診療を行う、在宅療養支援診療所としての評価を受ける、といった場合には、24時間対応を含む体制整備が重要な要素となります。

在宅医療における診療報酬の考え方(方向性)

在宅医療の診療報酬は、外来診療と比較して1人あたりの単価が高く評価されている一方で、必要な人員体制や24時間対応、看取りの実績などに応じて評価が行われる構造になっています。

どのような体制を整え、どのような患者層を主な対象とするのかによって、必要となる施設基準や算定可能な項目が変わってくるため、開業前にコンセプトと体制をしっかり整理しておくことが重要です。

令和8年度改定から考える「勝てる・生き残る在宅医療クリニック」の条件

令和8年度診療報酬改定では、患者の重症度、24時間対応の実効性、ICTを用いた多職種連携について、従来以上に具体的な要件が示されました。今後は単に訪問患者数を増やすだけではなく、「どのような患者を受け入れられるか」「夜間を含めて実際に診療を継続できるか」「地域の関係者と情報を共有できるか」を開業時から設計することが、診療の質だけでなく経営の安定にもつながります。

① 重症患者等を受け入れられる診療体制をつくる

令和8年度改定では、在宅時医学総合管理料・施設入居時等医学総合管理料の「月2回以上訪問診療を行っている場合(難病等を除く。)」について、直近3か月の対象患者の延べ診療月数が30月以上の場合、別表第8の2に該当する重症患者、包括的支援加算の対象患者、在宅がん医療総合診療料を算定する患者等を含む割合が2割以上であることが求められるようになりました。基準を満たさない場合には、月1回訪問診療を行っている場合の区分で評価されます。

ここで重要なのは、制度上の割合を合わせること自体ではなく、がん終末期や難病、医療処置を必要とする患者、介護負担の大きい患者など、医療必要度の高い患者を地域から紹介された際に受け入れられる診療体制を持つことです。開業時から、病院の退院支援部門や訪問看護ステーション等との連携、緩和ケア・看取り・緊急時対応に必要な人員や運用を整えておくことが、今後の診療報酬改定にも対応しやすいクリニックづくりにつながります。

② 夜間対応は「自前か外注か」ではなく、制度変更に追随できる設計へ

24時間対応可能な医師を開業時から自院だけで十分に確保することは、現実的には容易ではありません。そのため、夜間オンコールや往診代行を担う外部事業者を活用することは有力な選択肢です。一方、令和8年度改定では、第三者(株式会社等)の利用によって24時間の連絡体制・往診体制を確保する場合の要件が明確化されました。

例えば、コールセンター等を患者・家族の連絡窓口とする場合には、その旨を事前に説明したうえで、クリニック側がコールセンター等からの連絡を24時間受けられる体制が必要です。また、患者に事前に氏名を知らせていない往診医が対応する場合には、事前に自院の在宅医療を担当する常勤医師と面談し、診療方針等を共有していることなどが求められます。  外部オンコールを単なる「夜間の外注」としてではなく、診療報酬上の要件を満たすことのできる事業者との連携が求められます。

外部事業者を選定する際も、料金や対応エリアだけでなく、診療報酬改定への対応、担当医との情報共有方法、患者への案内方法、バックアップ体制などを確認し、今後の制度変更に応じて運用を見直せる仕組みを備える事業者と連携することが重要です。

③ ICTは「加算取得のため」ではなく、変化に強い運営基盤として整える

在宅医療では、医師だけでなく、訪問看護、薬局、ケアマネジャー、介護施設など、多くの関係者が一人の患者に関わります。令和8年度改定では、在宅医療情報連携加算で使用するICTについて、患者の診療情報等を一元的に管理されたサーバーで保管すること、患者が同意した参加者のみに情報共有すること、参加者の範囲を設定できること、必要な情報を常時閲覧・取得できることなど、具体的な要件が明確化されました。

今後、医療・介護分野でも診療報酬・介護報酬改定に対応していくうえで、ICT化は避けて通れません。開業時のシステム選定では、現在必要な機能だけで判断するのではなく、患者数や連携先が増えた場合にも情報を一元管理できるか、関係者を柔軟に追加できるか、制度変更に応じて運用を変更できるかという視点が重要です。後からシステムを全面的に入れ替える負担は大きいため、開業時から「将来の変化に対応できる情報基盤」を目指すことが、持続可能な在宅医療クリニックの条件の一つになります。

令和8年度改定から見えてくるのは、患者数だけでなく、重症患者への対応力、実効性のある24時間体制、多職種が安全に情報共有できるICT基盤といった「体制そのもの」を評価する方向性です。制度変更のたびに一から作り直すのではなく、開業時から拡張・変更しやすい仕組みを整えておくことが、長く選ばれ続ける在宅医療クリニックにつながります。

感染症・災害時を見据えたBCPの考え方

近年の診療報酬改定では、感染症流行時や災害時にも医療機能を維持する体制づくりが重視されており、一部の施設基準や機能強化系の評価の中に、業務継続計画(BCP)的な考え方が組み込まれています。

在宅医療クリニックにおいても、非常時にどのように連絡を取り、どの範囲まで診療を継続・縮小するかといった方針をあらかじめ整理しておくことで、患者・家族の安心感が高まり、地域からの信頼にもつながります

在宅医療開業のメリットと負担

在宅医療に特化したクリニックは、一般的な外来クリニックと比べて大型医療機器への投資が少なくて済むため、設備面の初期投資を抑えやすいという特徴があります。

一方で、24時間対応や連携調整、家族からの相談対応など、時間的・精神的な負担が大きくなりやすいため、複数医師やスタッフを前提にした体制設計と、無理のない働き方の設計が不可欠です。

地域包括ケアのなかでの在宅医療

国は地域包括ケアシステムの構築を進めており、高齢者の医療提供の場は病院から施設・在宅へとシフトしています。

在宅医療は、かかりつけ医機能と連携しながら「地域で最期まで暮らす」ことを支える機能として位置づけられており、今後も地域医療の重要な柱であり続けることが想定されています。

連携が鍵:基幹病院・訪問看護・ケアマネ

在宅医療クリニックの成否を左右するのが、基幹病院、訪問看護ステーション、居宅介護支援事業所(ケアマネジャー)、高齢者施設などとの連携です。

紹介・逆紹介の流れや、緊急時・入院時の受け皿、退院支援カンファレンスへの参加など、地域の関係者と早い段階から顔の見える関係を作っておくことで、診療の質と患者紹介の両面が安定してきます。

将来展開:訪問看護ステーションやサ高住との一体運営

在宅診療所としての運営が軌道に乗った後、医療法人化を行い、グループ内に訪問看護ステーションや居宅介護支援事業所、サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)などを併設するケースも増えています。

医療と介護をワンストップで提供できる体制を整えることで、患者・利用者の安心感や利便性が高まるだけでなく、地域における役割・ポジションもより明確になります。

バックオフィス体制の重要性

在宅医療では、訪問スケジュールの調整、各種書類作成、連携先との情報共有、家族からの電話相談対応など、外来中心のクリニックとはまた異なる事務・調整業務が発生します。

医師だけに負担が集中しないよう、在宅医療の特性を理解した事務スタッフや看護師とともに、バックオフィス体制を構築しておくことが、持続可能な運営の鍵となります。

複数医師によるワークシェアという発想

24時間365日の在宅医療を、1人の医師だけで担うことは現実的ではありません。

複数の常勤医・非常勤医で役割や時間帯を分担する体制を前提にすることで、医師のライフワークバランスを保ちながら、24時間対応や看取りまで含めた在宅医療を継続しやすくなります。

在宅医療で取得を検討したい主な項目

開業コンセプトや体制に応じて、次のような施設基準や算定項目を検討するケースが多くなります。

具体的な点数や要件は改定ごとに見直しが行われるため、詳細は最新の診療報酬点数表および関連通知をご確認ください。

ホームページで「在宅医療専門」が伝わる工夫

標榜上は「内科」「循環器内科」「精神科」など、一般の外来クリニックと同様の表記となり、「訪問診療」などの文言を標榜に含められない自治体もあります。

そのため、ホームページでは「在宅医療」「訪問診療」といったキーワードを明確に打ち出し、医療機関ポータルサイト等でも訪問診療にチェックを入れる、自由記載欄で在宅専門であることを記載するなど、在宅医療に強いクリニックであることを積極的に発信していくことが重要です。

ホームページに載せておきたい具体的情報

在宅医療クリニックを探している患者・家族、連携先の医療・介護職が知りたいのは、次のような情報です。

  • クリニックの理念・院長の思い(在宅医療に取り組む理由)
  • 対象となる患者像(通院困難な方、がん終末期、認知症が進行した方など)
  • 対応エリア(市区町村名や目安の移動時間)
  • 診療時間と対応時間帯(平日・時間外・夜間・休日の方針)
  • 在宅医療開始までの流れ(相談〜初回訪問までのステップ)
  • 費用負担の概要(医療保険・介護保険の利用と自己負担の目安)
  • 緊急時や入院が必要になった際の連携病院

こうした情報を整理して掲載することで、患者・ご家族にとっての分かりやすさだけでなく、地域の医療・介護関係者からの紹介もしやすくなります。

まずは気軽に相談から

在宅医療を中心としたクリニック開業は、診療報酬の理解だけでなく、地域のニーズ、連携体制、働き方とのバランスなど、多くの要素を総合的に考える必要があります。

特に今後は、重症患者への対応、夜間・休日の診療体制、ICTを活用した情報連携を「開業後に考える課題」とせず、将来の診療報酬改定まで見据えて開業計画に組み込んでおくことが重要です。

FPサービス株式会社では、クリニック開業をお考えの先生を対象に無料の個別相談を受け付けております。
「在宅医療で独立したい」「外来と在宅の比率をどう設計すべきか悩んでいる」「将来的に訪問看護やサ高住も視野に入れている」などお考えでしたら、まずはお話をお聞かせください。

この記事の監修者 椎原 正

FPサービス株式会社 代表取締役
FPサービス株式会社創業者。中小企業診断士(経済産業大臣認定・国家資格)。
クリニックの開業および経営コンサルティングに長年携わり、事業計画策定や資金調達、
開業後の経営支援まで幅広くサポートしている。著書に『クリニック開業[実践]ガイダンス』
『<決定版>クリニック開業ガイダンス』(いずれも現代書林)があり、累計4,400部を突破。
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