医療法人の役員報酬の決め方、相場とは?
医療法人化を検討されている先生や既に医療法人化されている先生から、役員報酬の設定に関するご質問をよくお受けします。
中には役員報酬額の相場や上限、設定基準が分からないという先生もいらっしゃいます。
また、無料相談などで様々な理事長の先生とお話しさせていただくと、ファイナンシャルプランニングの観点から見てあまり好ましくない役員報酬額を設定してしまっている事例をお見かけします。
そこで、ここでは役員報酬額の決め方やその注意点などをご紹介していきます。
役員報酬とは
役員報酬とは、医療法人の役員へ支払う報酬のことを言います。
従業員への給与と役員報酬は一見同じように思えますが、この2つには違いがあります。
その違いのうちの1つが、「損金算入」についてです。
従業員への給与は原則として全額損金算入できますが、役員報酬の場合は下記ルール(定期同額給与の原則)に則って支払った場合にのみ損金算入することができます。
- @同一事業年度中は、原則報酬額を一定にする
- A報酬額を変更する場合、事業年度開始日(期首)から3ヵ月以内に変更する
※個人事業の場合は、役員報酬制度はありませんが、専従者給与として配偶者に報酬を支払うことができます。
役員報酬の変更
「定期同額給与の原則」の項目でも述べましたが、役員報酬額は事業年度開始日(期首)から3ヵ月以内であれば変更することができます。
それ以降は原則として変更することができません。
役員報酬の変更に関してこのように厳密な規定が設けられている理由としては、自由に変更することが認められると、決算期直前に役員報酬を増額して、支払う法人税額を減らすことが可能になってしまうからです。
※医療法人の経営状況が悪化したことによる役員報酬の減額については、認められる場合があります。
役員報酬額の決定は、社員総会及び理事会の決議を取る必要があります。
また決議内容は議事録を作成し、保存しておく必要があります。
役員報酬を決定する際の考え方
税率を重視をする
個人事業の場合は、所得税率によって納税額が算出されます。
例えば課税所得が2,000万円の時は住民税と合わせて約51%の税率となります。
一方、医療法人の場合は、法人税率によって納税額が算出されます。
課税所得が2,000万円の時は住民税と合わせて約30%の税率となります。
このように、税率を重視するのであれば、医療法人にお金を残す方が支払税額を抑えることができます。
必要なキャッシュを重視する
個人診療所時代は、利益が全て先生の所得となり自由に使うことができましたが、法人化後は月々の役員報酬によって生活をしていくことになります。
住宅購入や教育資金(大学入学等)など何か大きな出費が生じた際に、役員報酬額が少ないとキャッシュ不足になります。
そのような出費を見越して毎年役員報酬額を設定することが重要です。
バランスが大切
2つの基準のうちどちらか一方のみを重視して役員報酬額を設定することは望ましくありません。
役員報酬額を過大に設定すると、当然個人への課税は大きくなります。
また、法人の資産額は少なくなり、設備投資や修繕等にお金を割くことができなくなります。
一方で税率差を重視して役員報酬額を低く設定してしまうと、いざという時に使用できるお金が手元にないということが生じかねません。
注意
医療法人に貯めこんだお金は自由に使えるわけではなく、医療法人で行う事業のみに使用できるため、理事長個人の生活のために使用することはできません。
そして、医療法人を解散する際に、医療法人に残余財産を残したままだと国のものになってしまうので、残余財産がマイナスにならないように対策を立て、ほぼゼロにして解散する必要があります。
先生がリタイアした際の退職金などで先生の手元に残すこともできますが、あまりに多くのお金が残ってしまっていると全てを退職金にすることは難しくなります。
将来生じる大きな出費を前々から考えて計画を立てておくことが、役員報酬額を決めるうえでも非常に重要です。
詳しくは無料相談をご利用ください
役員報酬については、先生個人や家族のライフプラン、クリニックの経営状況等を総合的に判断して決めて行くことになります。
また、原則1年に1回しか変更できないため、慎重に決めていく必要があります。
FPサービス株式会社では、法人化の支援や活用、ファイナンシャルプランのアドバイスも行っておりますので、お気軽にお問い合わせください。
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