医師の退職金:開業すると退職金がなくなる?
企業に勤めておりますと定年を迎えた際に勤務先から退職金をもらえることがあります。
実はすべての企業が退職金制度を有しているわけではなく、それは病院に関しても同様です。
退職時に退職金を支払うかどうか、法律で制定はされていませんので、あくまで病院側が規定していることとなります。
いざ定年退職を迎えるというときに、「勤務先の病院には退職金制度がなかった!」ということもありえなくはありません。
勤務医の先生にとっての退職金に関して、そしてよくお受けする「開業医になると退職金はないのですか?」という質問に関しても交えてご紹介していきます。
退職金は主として老後資金に関わってきます。今のうちからご自身の状況を整理、理解しておきましょう。
勤務医の退職金って?その相場は?
勤務医の先生たちの退職金相場は統計データなどがありません。
おおよそ相場として平均1,000万円〜2,000万円ほどではないかとされていますが、お勤め先によってかなり差があるようです。
そもそも退職金制度がないということもあるかもしれません。
大学病院に定年まで勤めた場合には、学校法人からの退職金支給となります。
一方クリニック開業のご相談を受ける中でよくあるのが、医局を通じて複数の病院で勤務をされているパターンです。
その場合、別の病院に就職するたびに退職金支給のために相当される期間がリセットされてしまいます。
このような場合には、退職金の額はあまり期待できないものと思われます。
退職金がない場合には?
ご自身のお勤め先にて退職金がない場合にはどうすればいいでしょうか。
この場合には、お勤め先の病院に相談をするか、退職金制度がある病院へ転勤をするかの2択になります。
とはいえ、相談してすぐに制度を設けてくれるかというのも難しく、また理想の転勤先がすぐに見つかるとも言い切れません。
ご自身で今からできるNISAなどで資産形成を行う、勤務医の先生たちの間でよく行われている不動産投資なども選択肢かもしれません。
(※クリニック開業を考えていらっしゃる場合には、不動産投資はお勧めできません。これは銀行融資に係るところで、詳しくはこちら「医院開業おいて不動産投資が足かせになる?」でご紹介しております。)
給与と退職金の関係を税金からみると・・・
勤務医の先生とお話しすると、退職金については実は給与に上乗せをされている場合があります。
退職金としての積み立てをしない代わりに、毎月のお給料にその分が載せられているといった具合です。
老後資金という面で考えますと、もしも交渉可能であれば毎月の給与から一部差し引いて退職金としてプールしていただくのがよろしいかと存じます。
老後資金を準備するという以外に、節税というメリットも享受できるからです。
毎月のお給料が上がるということは、それだけ課税所得も大きくなるということです。せっかくお給料を増やしていただいても、それゆえに所得税が上がってしまってはもったいないですね。
税引き後の手残りから先生が自分で老後資金を貯めていくよりも、病院の方で退職金として準備いただけると良いでしょう。
また、もしも開業するという場合にも、その貯めた分の退職金を開業における自己資金として利用することもできるでしょう。
開業医の退職金は?
弊社は開業のコンサルティングを行っておりますが、同時にファイナンシャルプランニングもご支援をしております。
開業される先生にとっても、やはり退職金は気になるところです。
結論として、開業医になると退職金はありません。
ご自身が経営者になるということで、退職金制度のない病院に勤めているのと形式上同じなのです。
勤務医時代からの資産形成を続けることや、クリニックの利益から毎月の積立などで退職金に変わる老後資金を準備されるのが、堅実な手段と思われます。
しかし、開業医ならではの老後資金の準備方法として、医療法人の活用があげられます。
医療法人活用で退職金を捻出
医療法人化しますと、先生は法人から“役員報酬”をもらう形になり、形式として勤務医に戻るようなイメージです。
先生個人のお財布のほかに、医療法人にもお財布ができることになります。
そこで、法人の中に所得を貯めておき、最終的に退職金としてご自身に支給するというスキームを組むことができます。
重要なのが、その退職金に対する課税の計算式です。
退職金から控除分を引き、その上で残った額の1/2のみに課税となるのでかなり低い税率で退職金を受け取ることができます。
詳細は医療法人のメリット・デメリットでご紹介しておりますので、是非ご確認ください。
参考:国税庁 退職金と税 退職金にかかる税金所得税及び復興特別所得税の源泉徴収税額の計算方法(令和2年分)
早くから情報収集はしておきましょう!
20代や30代のうちにはそこまで老後資金、退職金のことを意識されることはないかと思います。
しかし人生において様々にかかるお金の中で、老後資金の考慮はやはり欠かせません。
現在の状況を把握するだけでなく、資産形成や開業後の法人活用の手段など、さまざまな情報を持っておくようにしましょう。