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ドクターサポート通信
Drサポート通信では、クリニック経営のヒントとなる情報をお届けしています。
先見性ある医療の事業モデルは何か
現在、社会問題の一つである医師不足のために、あちこちで病院閉鎖が出たり病院機能が低下したりして病院主体医療の崩壊が進んでいます。地域医療を立て直すために、今求められているのはクリニックの医療機能の転換です。この視点で見ていくとクリニックが取り組まなければならないテーマや戦略的課題が浮かび上がってきます。
かかりつけ医と独自性の両立
今やクリニックは、かかりつけ医としても外来医療機能中心の枠組みを超えた、一歩先(先見性)を見識した戦略・戦術を方針に掲げて、クリニックが目指すべき“未来のあるべき姿”に向けた新しい事業モデルをデザインし、医療機能が低下している領域へのスキマ作戦を積極的に仕掛けることが必要となっています。
例えば、これまで分娩を取り扱ってきた開業医の高齢化など医療環境の変化も相まり、分娩を行わず婦人科外来診療のみを手がけるケースが一般化しています。このように出産に対応できるクリニックの数が激変している中で、あえて有床のクリニックにして分娩や手術を手がけていく戦略・戦術を行っていくというような事例です。
地域に不足している医療機能を補完することが、今後のクリニックに求められる重要な役割であり、近隣のクリニックとの連携・ネットワークを含めて「複数医師体制」で対応していくべきであると考えます。特に病院における救急医療機能が崩壊しつつある昨今、医師不足に陥っている急性期医療機能の補完に、クリニックが積極的に関与していくことが求められています。
高い専門性を持ったクリニックの開業
最近のクリニック開業ラッシュで、高い専門性を持った勤務医が次々と開業しています。開業後も高い医療技術を提供したいと考えている医師もいます。地域で不足している診療機能を的確に捉え、病院と連携し手術や検査などを手伝ったり、ターミナルケア機能を取り入れたり、在宅医療で手薄な在宅リハビリテーション機能を専門外でも取り入れたりする方法もあります。
今開業医がベッドや居室に注目している背景には、急性期病院の在院日数の短縮に伴い、医療必要度の高い患者が退院して、症状が重く自宅で療養管理するには限界がある在宅患者が増えてきているという状況があります。その典型が末期がん患者や認知症患者です。
健康教室などの開催で地域貢献
地域から真に求められている機能は、医療保険や介護保険のサ−ビスばかりではありません。地域コミュニティーの中で地域住民にセミナーを開催し健康教育をしたり、介護のボランティアを育成したりするなど、クリニックだからできる地域貢献の方法はいくらでもあります。 このような地道な活動を続けることも地域住民からの支持・信頼につながり、ゆくゆくはクリニックの患者増につながって行くでしょう。この様に時代のニーズに応える診療活動やその周辺活動を行うことが、開業医自身のやりがいの一つになる事と思います。
医療崩壊への対策に取り組み、再生を目指していく過程で、必ずクリニックの機能強化要請及び地域医療の担い手としての期待は強まってくるでしょう。この環境の変化を的確に捉えて、先見性ある創発型の将来事業モデルを描き、そのモデルに向かって戦略的医療マネジメント展開を行っていくことが、今開業医に求められています。戦略・戦術が決まれば、後は「人の配分の妙」で、事業展開のアウトカム(成果)が決まります。つまり、近隣の医師とネットワークを組むなり、複数医師体制を構築するなり、人とどのように協力しあっていくかで結果が大きく左右されてくるということです。