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ドクターサポート通信

Drサポート通信では、クリニック経営のヒントとなる情報をお届けしています。

クリニックの災害対策について

東日本大震災は、岩手県・宮城県・福島県を中心に、北海道から高知県まで被害を及ぼしています。医療機関自体も、東北地方沿岸部を中心に、数多くの病院やクリニックが建物流失、全半壊、床上浸水などの大きな被害を受けました。

例えば、宮城県医師会の行った医療機関の被災状況アンケート調査(回答は93%)によれば、津波以外の被害は全壊・大規模半壊・半壊が75ヶ所、津波による被害は建物流失・床上浸水が111ヶ所に上っています。

このうち全壊16ヶ所、建物流失13ヶ所。この全てが、入院設備のないクリニックで、半壊や床上以上の浸水も半分以上をクリニックが占めています。
震災直後から国は、現地の救済活動が円滑に行えるよう規制緩和を行い、医療チームを派遣するなどの様々な対応策を行いました。

しかし電気や水道などのライフライン停止により被災者の体調は悪化し、人工透析の患者様などには深刻な影響が出てしまい、かつ避難所生活の長期化が生じ、被災者の方の置かれた状況は厳しいものとなっていました。

この様に東日本大震災の被災状況から、身近な1次医療を対象とする医療機関に大打撃が生じたことが明らかになったため、医療機関をはじめ介護施設や行政機関等の間では防災への関心が高まり、これまでの災害対策からもう一歩掘り下げた対策を講じようとする気運が高まってきました。

「震災発生時に本当に迅速に行動できるのか」
「震災に伴う火災発生時、消火器が適切に使えるのか」
「震災発生時、的確な判断に基づいて避難誘導させられるのか」

今までのように漫然と避難訓練を行うのではなく、より実践的な対応の必要性が求められています。

特に定期的な医療やケアが必要な患者様に対する連絡や確認体制の確立や強化、震災時の医療連携システムやネットワークの見直しなども出てきました。
これまでは自院の可能な範囲内で震災対策に取り組んできたクリニックでも、今後は地域住民や行政機関を交えて震災対策に取り組む必要性が生じてきています。

主要な震災対策、見直しのポイント

  • 災害発生直後の勤務可能スタッフ人数の事前把握
  • 非常招集基準と方法決定
    (例:震度5強以上の地震発生時、全スタッフを緊急招集する)マンパワー不足に対する応援要請を含む)
  • 被害状況の把握方法(建物・設備・備品の破損状況)
  • ライフライン途絶時の現状把握と復旧手段の検討
  • 二次災害防止の検討(余震対策を含む)
  • 避難経路・避難先の確保及び搬送手段(危険物の撤去を含む)
  • スタッフ・家族や患者様などの安否情報確認
  • 患者様への正確な情報提供手段、医療継続の準備
  • 地域や行政機関との震災活動相互応援協定

こうしたスタッフの行動指針を事前に策定することが大切です。
この行動指針には、地域特性や事業内容に応じた実践的な対応方法(取り組み方法)を盛り込み、訓練の中で習慣化するよう実施していきましょう。

震災発生直後に最も大変なのがマンパワーの確保で、これには普段からクリニックの近くにスタッフを集めておく努力と工夫が必要です。
ライフラインが途絶えた時、避難か医療の継続かを判断する必要があります。
医療を継続する場合、建物・設備については専門家の判断が必要となります。

建物については、行政の耐震診断を受けるか、提携した近隣地元建築業者の点検・応急処置を受けるか、 建物を賃貸している場合には建物賃貸人への補修依頼などを事前に検討し、決めておくことが大切です。

クリニック内のガス設備、水道設備、電気設備、電話設備(携帯・インターネットを含む)、 医療ガス設備等は自己点検できるようにしておくと共に、火気の点検確認、 危険物(電気ブレーカーを含む)の使用停止基準と点検確認、通信手段の確認を速やかに行えるようにもしておきましょう。

備蓄品は、飲料水、食糧品、簡易トイレ・トイレットペーパーなどの日用品をはじめ、手動式吸引器、滅菌済みピンセット・舌圧子、消毒用綿棒、三角巾、使い捨てガウンなど必要な医療機器材、 医薬品類などを自院の可能な範囲内で、備蓄しておいたほうが良いでしょう(7日分位を目安に)。

実際に地震が起きたら

震度5強以上の震災を想定して、予防対策の主要ポイントを記述してきましたが、いざ災害が発生したら想定を信じすぎてはいけません。
想定外のことが必ず起きるため、訓練で得た感性を活かし瞬時に的確な判断を下し行動することが重要となります。

今回の大震災で、石巻市の中学生が取った行動(中学生が先頭に立って幼児・小学生・高齢者らを指揮し、高台から高台へと逃げたこと)が、訓練の大切さとそこから得た感性の鋭さを示唆していることを 教訓として肝に銘ずることが大切でしょう。
今後の訓練の一助になれば幸いです。

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