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ドクターサポート通信

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緊急時の労務管理

東北地方太平洋沖を震源とする東日本大震災に続き、福島原発での放射能事故により、クリニック経営に形の見えない不安を抱えていらっしゃる方も多いかと思います。

大震災後、クリニックにおける労務管理においても対応を求められるケースが見受けられますので、今回は「災害時の計画停電によるスタッフへの賃金」についてのケーススタディをご紹介します。

計画停電の実施により一時的に休診にする場合

停電の時間帯だけ休診にする場合は、スタッフに対して休業手当を支払う必要はありません。しかし、計画停電の時間帯以外を休診にした場合は、原則、休業手当(賃金の60%)を支払う義務が生じます。

ただし、例外として計画停電以外の時間を含めて休診にした場合でも休業手当の支払い義務が生じないケースがあります。

例:診療時間が:10:00〜13:00、15:00〜18:15、計画停電:15:00〜18:00の場合
18:00〜18:15の15分間の診察を行うために、午前から引き続いて午後までスタッフを留め置くのは経営上著しく不適当と考えられるため。

つまり、計画停電の時間帯のみを休診にすると、クリニックの経営上著しい損害をもたらし、さらにその対処方として、停電時以外の時間帯も含めて休診にする以外、現実的な手段がないような場合、支払い義務は発生しません。
(平成23年3月15日付 厚生労働省発表の通達による)

地震の影響でクリニックの一部が損壊し、当分の間診療ができなくなってしまった場合

被災により、クリニックを長期休診や閉鎖せざるを得なかった場合に、賃金を支払う必要はありません。

今回の震災のように、経営者が最大限注意しても避けることのできないような外部要因による事故が原因である時には、休業手当の支払い義務はなくなるからです。
休業中のスタッフへの金銭的なフォローとしては、雇用保険の「失業手当」や、有給休暇による処理が考えられます。

また、経済上の理由により事業縮小を行った企業に対して、手当などで支払った金額の最大75%を国が負担する制度(厚生労働省の「雇用調整助成金制度」)もありますので、クリニックの経営者が休業手当などを支払った場合には、この支給対象になるかどうかを一度検討してみることをお勧めます。

交通機関の混乱により通勤が難しくなり、スタッフが欠勤した場合

スタッフが自主的に出勤を控えた時や出勤できなかった場合は、賃金の支払いは不要となります。雇用契約の大原則であるノーワーク・ノーペイの原則により、スタッフは決められた日に決められた場所で決められた時間、労働する義務があり、通勤が困難だからといって、労働することが免除される訳ではないためです。

また、クリニックの経営者の判断でスタッフへ自宅待機を命じた時は、休業手当(賃金の60%)を支払わなければなりません。

計画停電などにより交通機関が混乱して帰宅難民にならないため、スタッフを早めに帰宅させる場合

上記の事例と同様に、ノーワーク・ノーペイの原則が基本的な考え方です。
早退が経営者の判断によるものであれば、休業手当の支払い義務があります。
スタッフ自身の判断による場合には、本人都合による「不就労」に該当するので無給です。

また、本人から有給休暇取得の申出があった場合は、有休取得の当日申請を終業規則などで禁止していても、例外的に認めることも一つの方策です。

業務中に地震が発生し、ケガをした場合等の労災の取扱いに関しては、「東北地方太平洋沖地震に伴う労災保険給付の請求に係る事務処理について」という厚生労働省の通達を参照して下さい。
参照:(http://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/2r98520000014tr1-img/2r98520000015j3l.pdf
(インターネットに接続し、PDFファイルが開きます)

この震災をきっかけに、緊急時の労働条件などについてスタッフと話し合い、お互いが共通の認識を持つことで、いざというときに混乱しないようなクリニックのルール作りを進めていくことをお勧めします。

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