クリニックでの採用:売り手市場の中で何をするべきか
クリニックを新規開業するにしても、すでに開業されていても、先生に常に付きまとうお悩みはスタッフ問題です。
クリニック内でのスタッフの管理・運営もありますが、まずは人を集めるということがよく課題になります。
- 求人情報は出しているのだけど、全然応募が来ない。
- 応募は来るのだけどあまりいい人が集まらない。
- 採用したは良いものの、退職がすぐに出てしまい、いつも募集をし続けている。
弊社コンサルタントが様々な先生にご相談を受けると、上記のようなお悩みをよく聞きます。
新規開業ではスタッフが集まらないと開業もできないため、先生たちは不安を抱えていらっしゃり、また開業後も人員不足の際の採用が悩みのタネです。
こちらのページでは、コロナ前後で変わった医療機関の求人事情を交えて、スタッフ採用で気を付けていくポイントを解説していきます。
コロナで変わった求人事情
2020年の新型コロナウイルス感染症のパンデミックにより、医療機関は「受診控え」や「PCR検査実施」、「発熱外来実施」、「コロナワクチン接種対応」など様々な面で大きな環境変化を受けてきました。
新規開業ではそもそも開業を踏みとどまる先生もいらっしゃいましたし、開業されている先生は経営的な打撃を受けたことと思います。
そんな中で、クリニックのスタッフさん事情の変化も、新規の無料相談や顧問先のクリニック様の巡回で目にしてまいりました。
医療機関へのハードル

まずは医療機関での勤務ハードルが高くなりました。
コロナという病気に対してやはり怖さがあり、医療機関で就労することに抵抗が出てきました。
医療従事者の中には大きな病院での勤務が大変になり、そこから離れることでクリニックへ勤務を変更する方も増えたことはあります。
しかしなるべくコロナに関わりにくい診療科のクリニック(整形外科や産婦人科など)を選んでいくといった傾向が見られたり、科目によってはなかなかスタッフさんの確保が難しい状況が見られました。
医療事務確保は課題
看護師さんなどはある程度確保する見込みがあったのですが、問題は医療事務さんです。
医療従事者は病院、クリニックという限られた職域での求職活動になります。
しかし医療事務さんはもっと広い舞台を見ているのです。
一般企業での就労も視野に入るため、そちらとの取り合いも発生します。
そこで、ニューノーマルな働き方が差別化要因になっています。
一般企業では、フレックス制度やテレワークが導入され、主婦の方やパートの方でも働きやすい環境を整えていることがあります。
しかし医療機関はやはり定刻に出勤していただく必要があり、それが障壁になるということもあります。
医療が引き続き安定している業界であるとはいえ、このような社会変化からクリニックの採用人事は大きな影響を受けました。
求人媒体の選択
なかなか求職者が集まらないという状況では、売り手市場へのシフトチェンジがありました。
そこで求人媒体についても、多様化や活用の仕方に変化が見られます。
コロナ前であればおおよそ有料求人媒体を2〜4週間ほど出稿すればある程度の応募がありました。
しかし状況が変わり、医療業界での求職者数の減少から求人媒体の利用の仕方にも工夫が求められてきました。
求人媒体の種類について
有料求人媒体の中には求人掲載料を取る媒体もあります。
しかし一方で、掲載料は無料で、実際に雇用契約に至った場合に成功報酬を取る媒体もあります。
一度に多くの職種を募集する新規開業時には依然として掲載料だけを支払うタイプを利用することにメリットがあります。
しかし応募が集まりにくい環境下で、すでに開業されていて看護師さんを1名だけ、事務さんのパートを2名だけ募集したいという場合には、成功報酬型の媒体選択も費用対効果の面で検討が必要になります。
また専門職種(理学療法士や視能訓練士、培養士)であれば広く医療職を募集する媒体よりも、専門職種だけを対象にできる媒体をしっかりと利用することも大切です。
採用も投資ですから、適切なところに投資しなくてはなかなか反応が良くないのです。
このようにクリニックではより一層のスタッフ採用の努力が必要になりますが、適切な媒体選択以外にも気を付けるポイントがあります。
魅力を最大限に押し出す

先生がご自身で作成した募集要項を見てみましょう。
- 先輩が丁寧に教えます。
- 明るい職場です。
- 働きやすい環境を整えています。
など、なんとなくの募集要項になっていませんか?
売り手市場の現状で、クリニックの個別の魅力を発信することは非常に重要です。
募集文章がそもそも無い、もしくはありきたりな内容になっている場合、求職者の方が確認できるのは、
- 診療時間(勤務時間)
- 給与
- 勤務場所
くらいになります。
つまり純粋に雇用条件で他院と比較するだけになってしまいます。
もちろんその状態でも応募してくれる方もいるかもしれません。
しかし、そのように「このクリニックだから働きたい」という志望理由がないと、条件次第ではすぐに他の医療機関へ移ってしまうことになります。
初めのマッチングがうまくいっていなければ、長期スパンで働いてもらうのは難しいのです。
無駄な書類選考や面接をしないためにも、求人票には先生のクリニックの特色、理念や診療方針など、オリジナリティをもって記載するようにしましょう。
クリニックのホームページもしっかりと活用する

外部媒体の活用も重要ですが、クリニックのホームページでの情報発信も忘れてはいけません。
求職者の方も、特に意欲が高い方ほどクリニックのホームページを確認しています。
診療内容は業務内容にあたり、医師紹介は上司の紹介のようなものです。
予約システムがあるのか、どのくらいの待ち時間が出ているかなどは、働く人にとっては忙しさの目安になったりもします。
外部媒体だけで安心せず、ホームページの求人ページ他を充実することも忘れてはいけない大切なポイントです。
ホームページの活用についてはこちら「ホームページは質の高いスタッフ採用のカギ」もご参考ください。
集めて終わりではなく、育て囲い込む
ここまで採用に関するポイントを確認してきましたが、求職者市場が売り手市場であることには変わりはないため、既開業の先生たちには現在勤めてくれているスタッフさんを大切にすることも忘れずにいてほしいと思います。
採用がうまくいっても、また離職者が出てしまっては振出しに戻ってしまいます。
再び募集の手間と費用、教育や人間関係の調整コストがかかってくることで、先生のストレスにもなります。
現在勤務しているスタッフを囲い込み、離職を防いでいくことも重要なスタッフ運営、労務管理になります。
物価高騰や最低賃金上昇への対応、予約システムや電子カルテ、チャットツールなどDX化の活用での働きやすさの改善。
接遇研修の実施や無理のない範囲でのスタッフミーティングなどの教育の充実、住宅手当や食事補助などの福利厚生の改善など、スタッフが継続して勤務してくれるような環境づくりにも気を配りましょう。
今お悩みの採用問題に関して、注意点を踏まえてアクションをする助けになりますと幸いです。