新旧医療法人とは?持分あり、なしの医療法人の違い
医療法人には出資持分あり医療法人、出資持分なしの医療法人の2種類が存在します。
ここではそれぞれの違いやメリット・デメリット、またその解散や相続時の相違点などをまとめてご紹介しております。
出資持分ありと出資持分なしの医療法人の違いとは?
出資持分あり医療法人
法人の定款において、出資持分(設立時に先生が出した元手)に関する定めを設けているものを指します。
平成19年(2007年)の法改正において、新規に持分ありの医療法人の設立はできなくなったため、現在の医療法人化では選択肢にはありません。
経過措置型医療法人
法改正時点で出資持分のある医療法人については、当分の間存続していくことが認められ、それら法人は「経過措置型医療法人」と呼ばれています。
経過措置型医療法人がいつまで認められるかは不明ですが、令和4年時点でも約66%以上の医療法人が持分ありとなっております。(厚生労働省:種類別医療法人数の年次推移)
出資持分なし医療法人
こちらは上述の通り平成19年4月以降に新規設立された医療法人であり、出資持分に関する記載が定款に無いものになります。現在持分ありの医療法人の設立はできませんので、全ての新規設立医療法人はこちらの形態になっております。
基金拠出型医療法人
持分なし医療法人のうち、基金制度を採用した法人を「基金拠出型医療法人」と呼びます。
基金とは、医療法人に拠出された金銭や財産について、医療法人と拠出者との間の合意の定めるところに従い、返還義務を負うものをいいます。
現在、新しく設立される医療法人のほとんどは「基金拠出型医療法人」です。
持分なし医療法人への移行計画
持分のある医療法人(経過措置型医療法人)について、厚生労働省は持分なし医療法人への移行計画を掲げています。
この移行計画は認定制度であり、厚生労働省への移行計画申請が必要になります。
制度の申請受付の締切は令和5年9月末とされています。
財産権の有無
すごく簡単にまとめますと医療法人における持分とは財産権の意味です。ですから持分ありとなしは以下のように説明できます。
- 持分あり医療法人は財産権のある医療法人
- 持分なし医療法人は財産権のない医療法人
ここからは具体的に出資持分のあり/なしがどのような影響をあたえてくるのかみていきましょう。
解散において
例えば医療法人を解散することになった場合。
医療法人を、院長先生が元手1,000万円を出資して設立したとします。そこで医療法人を解散することになった際の医療法人に残ったお金の行方をみてみましょう。
持分ありの場合
医療法人に仮に1億円のお金がある状態で、引退などで解散したとすると、その1億円は設立した先生のものになります。
持分ありの医療法人ではもともとのお金をだした出資者に対し、出資割合に応じて法人に残った財産が戻ってきます。
持分なしの場合
一方で持分無しの医療法人では同じように元手1,000万円を出資して設立したとしても、医療法人解散時には法人に残ったお金は全て国のものになります。
ただし、基金拠出型医療法人の場合は、設立時に拠出(基金制度の場合、医療法人へ金銭や財産を提供することを「拠出」といいます。)した金額は返還請求を行うことができます。
上記の例ですと、院長先生は医療法人から1,000万円を返してもらうことができます。
持分なし医療法人では、拠出した基金以上の金額を返してもらうことができないため、解散までにうまく法人からのお金を出しておくようにしましょう。
理事長、理事に退職金を支払うなどが手段となりえます。
詳しくは「医療法人に残った財産は国のものになるの?」もご参照ください
持分の買取請求について
例えば複数の医師が開業し、医療法人を設立後にどなたかが法人を離れる場合があります。
その際を例にそれぞれの違いを見てみましょう。
持分ありの場合
開業時には仲のいい医師と2名で出資し医療法人を設立。その際には互いに1,000万円出資し、合計2,000万円の資本金で設立したとしましょう。
その後医療法人は運営を続け、2億円が残っているとします。
もしも一人の先生が法人を離れる際、自身の出資分を請求したとすると、辞めていく先生には1億円を支払わなければいけません。
持分ありで設立された医療法人では、もとの出資分の割合に合わせ、医療法人の持つお金を支払わなければならないのです。
持分なしの場合
上記と同様の条件で、持分なしの場合にはどうなるでしょう。
答えは、設立時に拠出した金額を支払う必要がある(基金拠出型医療法人の場合)です。
就業規則に沿った退職金の支給などはありますが、設立時に出してもらった以上のお金を支払う必要はありません。
相続について
今度は医療法人化したドクターが相続をするケースをみてみましょう。
実はこの相続の点が持分のあり、なしで先生たちの悩みのタネになっています。
持分ありの場合
ドクターは出資額1,000万円で医療法人を設立、そこで経営は順調に進み法人には5億円の財産が残りました。
ここで例えばお子さんに相続が発生したとき、どうなるでしょう。
持分ありの医療法人は持分をそのまま相続可能です。これは相続人が医師でなくても同様です。
多額の相続税
しかしここで重要なのが相続税です。
相続の権利があると同時にここは課税対象となりますので、例えば5億円の評価額の持分であれば、その相続税は約2億2,900万円にものぼります。
これだけの相続税をキャッシュで支払うことはなかなか難しいと思われます。
持分ありの医療法人では、将来の相続のことを考え、早期に後継者への資産集中を行うことが必要になります。
持分なしの場合
同じ状況で持分なしの医療法人ではどうなるでしょう。
実は持分なしの医療法人では法人自体は相続の対象ではありません。ということで、相続税などもかからないということになります。
ただし、基金拠出型医療法人の場合、基金返還請求権は相続の対象です。拠出者が基金の返還を行わないまま亡くなった場合、その分の相続税が発生します。
総括
持分あり | 持分なし | |
---|---|---|
解散時 | 財産の返還を受けることができる権利がある | 財産の返還を受けることができない |
出資者が 離れる場合 |
出資した割合に応じて、医療法人の財産の返還を求めることができる権利がある | 出資した割合に応じた医療法人の財産の返還を求めることができない ※設立時に拠出した金額を求めることができる。(基金拠出型医療法人の場合) |
相続時 | 医療法人の財産の相続が可能(相続税には注意) | 相続はできない |
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持分あり医療法人を新規に作ることはできませんが、持分なし医療法人への切り替えは可能です。
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