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ベースアップ評価料とは?開業を考える医師のための“賃上げ原資”の考え方

投稿日: 更新日:
ベースアップ評価料とは

ベースアップ評価料とは、医療従事者の賃上げと人材確保を診療報酬で支えるために設けられた仕組みです。

すでに開業しているクリニックだけでなく、「いつかは自分のクリニックを持ちたい」と考えている勤務医の先生にとっても、スタッフの給与水準や人件費計画を考えるうえで避けて通れないテーマと言えます。

本記事では、毎回の診療報酬改定で変わる細かい点数や届出の手順そのものではなく、「ベースアップ評価料が作られた背景」と「クリニック開業・経営でどう活かすか」という“考え方”に焦点を当てて解説します。

最新の点数や具体的な届出方法については、厚生労働省などの一次情報へのリンクもあわせてご紹介します。

なぜ勤務医のうちからベースアップ評価料を理解しておくべきか

勤務医のあいだは、スタッフの給与や人件費は病院や法人が決めており、先生ご自身が具体的な数字を意識する機会は多くありません。
しかし開業医になると、「ご自身の給与」と同時に「スタッフの給与」と「人件費全体のバランス」を、自分で設計し続ける立場になります。

ベースアップ評価料は、こうした賃上げや人材確保に使うための“診療報酬上の原資”の一つです。
開業前からこの仕組みを大まかに理解しておくと、

  • どのくらいの給与水準・スタッフ体制で開業するのが自分に合っているか
  • どの程度の賃上げを前提に、中長期の経営を考えるべきか

といったイメージを、数字ベースで持ちやすくなります。

ベースアップ評価料の背景と“狙い”

ベースアップ評価料は、物価高や人材不足を背景に「医療現場の賃上げを診療報酬で後押しする」目的で導入・拡充されてきました。
端的に言えば、「スタッフの賃上げに取り組んだ医療機関を、診療報酬上で評価する仕組み」です。
令和6年の診療報酬改定時に設けられた制度で、令和8年の改定では継続的に賃上げをするため、点数がアップしました。

大枠としては、次のような考え方になっています。

  • 対象となる職員の賃金を引き上げる
  • その賃上げ分を、診療報酬(ベースアップ評価料)として評価する
  • 得られた評価料は、賃上げに充てることが求められる

つまり、単なる「加算の取り方」ではなく、

  • どの職種を
  • どれくらいの人数採用し
  • どの程度の水準まで賃上げしていくのか

といった人件費全体の設計とセットで考えるべき仕組みだと言えます。

ベースアップ評価料を算定するメリット

ここからは、実際にクリニックを開業したあとにベースアップ評価料を算定した場合、どのようなメリットがあるのかを整理します。
現在勤務医の先生にとっても、「将来自分が院長になったときに、どんなメリット・負担がある制度なのか」をイメージする材料として読んでいただければと思います。

ベースアップ評価料を算定することで得られる診療報酬は、全額を対象職員の賃上げに充てなければなりません。
一見すると医療機関側の利益が増えるわけではないように見えますが、開業後の経営という視点で見ると、次のようなメリットが考えられます。

賃上げ促進税制を活用できる

賃上げ率が一定の基準を満たした場合、「賃上げ促進税制」の対象となり、賃上げ額の一部について税額控除を受けられる可能性があります。
ベースアップ評価料を活用しながら賃上げを行うことで、診療報酬と税制の両面から人件費を支えることができる点は、開業後の院長にとって重要なポイントです。

他業界・他医療機関への人材流出を抑制できる

現在、医療業界は他業種と比べて賃金水準が低いと言われており、他業界への人材流出や、その結果として医療機関の労働環境が悪化するリスクが指摘されています。
ベースアップ評価料を算定しない場合、同じ地域で算定している医療機関と比べて賃金水準が見劣りし、スタッフがより条件の良い医療機関に流れてしまう可能性もあります。
将来自院の経営を担う立場になったとき、「人材確保・定着のためにどの程度ベースアップ評価料を活用するか」は、検討が必要なテーマのひとつと言えるでしょう。

ベースアップ評価料を算定するデメリット・注意点

一方で、ベースアップ評価料を算定することで生じる負担や注意点もあります。
開業準備の段階で、「どの程度までこの制度を前提にするか」を考えるうえで、あらかじめ知っておきたいポイントです。

届出や実績報告など、事務負担が増える

ベースアップ評価料を算定するためには、厚生局への届出、賃金改善計画の作成、年度ごとの実績報告など、対応すべき事務がいくつもあります。
各職員の賃上げ額の決定や、要件を満たしているかどうかの確認も必要で、すべてをスタッフ任せにするわけにはいきません。
開業当初からベースアップ評価料をフル活用する場合、こうした事務負担を誰が担うのか、税理士・社労士など専門家とどう分担するのかも含めて考えておくことが大切です。

患者さんへの説明が必要になる場合がある

ベースアップ評価料の算定によって、患者さんの自己負担額は一定程度増加します。
場合によっては、「この加算は何のために取られているのか」といった質問を受けることもあり、院長やスタッフが丁寧に説明できる体制づくりが求められます。
賃上げや人材確保の必要性をどう患者さんに伝えるかは、開業後のコミュニケーション設計の一部と捉える必要があります。

開業準備のどの段階で、どう考えるか

開業3年以上前:まずは「働き方」と「規模感」のイメージづくり

開業までまだ数年ある段階では、ベースアップ評価料の細かい点数を覚える必要はありません。

それよりも、

  • 自分はどの診療科・どのエリアで開業したいのか
  • 外来中心なのか、在宅や訪問診療も行いたいのか
  • スタッフ何名くらいの規模感で診療していきたいのか

といった「働き方」と「クリニックのサイズ感」をイメージしておくことが重要です。

そのうえで、「将来自分が院長になったとき、スタッフに対してどの程度の賃上げを継続的にしていきたいか」を、感覚レベルで考えておくと、後々ベースアップ評価料の位置づけが理解しやすくなります。

開業1〜2年前:人件費と賃上げ余力をざっくりシミュレーション

物件探しや診療圏調査、資金計画の検討が始まるタイミングでは、売上だけでなく「人件費と賃上げ余力」をセットで考える必要があります。

この段階で押さえておきたいのは、

  • 予定している診療スタイル(外来のみ/外来+在宅 等)
  • 採用したい職種と人数(看護師、医療事務、コメディカルなど)
  • 周辺クリニックの給与水準と比較したとき、自院の給与をどの位置に置きたいか

といったポイントです。

ベースアップ評価料を「積極的に活用する前提」で人件費を組むのか、それとも「余力があれば活用する」程度に留めるのかによって、開業時点の給与水準や募集条件の決め方も変わってきます。

開業直前〜直後:求人条件と現実のキャッシュフローのバランス

開業直前〜直後は、求人票に記載する給与条件と、実際の診療報酬・キャッシュフローのバランスを慎重に見極める時期です。

実際には、

  • 開業当初は患者数が読みづらく、固定費の負担感が大きい
  • スタッフの採用・定着のためには、ある程度魅力的な給与条件が必要

というジレンマが生じます。

ここでベースアップ評価料をどう位置づけるか(どの程度の賃上げを前提に組み込むか)を開業前から決めておくと、「採用時の約束」と「開業後数年の現実のキャッシュフロー」とのギャップを小さくしやすくなります。

人件費と採用力の“考え方”としてのベースアップ評価料

給与水準と採用条件をどう設計するか

クリニックの採用力は、診療内容や立地だけでなく、「給与水準」と「今後の賃上げの見込み」にも大きく影響されます。
周辺クリニックと比較して給与水準が見劣りする場合、応募数が伸びにくい可能性や、採用後の定着率が下がってしまう可能性があります。

ベースアップ評価料を活用する前提で賃上げ原資を見込むのか、あくまでプラスアルファの位置づけにするのかは、先生の開業スタイルやリスク許容度によって異なります。
いずれにしても、「どの職種に」「どの程度の賃上げを」「どのくらいの期間で」行っていくかという方針を、開業前の段階から意識しておくことが大切です。

スタッフ構成との関係

また、どの職種を何人採用するか、常勤・非常勤の比率をどうするか、といった人員構成の設計も、ベースアップ評価料と無関係ではありません。

  • 看護師・医療事務・コメディカル・受付など、それぞれの役割と給与水準
  • 常勤・パート・時短勤務など、多様な働き方をどう組み合わせるか

によって、賃上げのインパクトや原資の必要額は変わります。
開業前に「自分の診療スタイルを支えるには、どんなチームが必要か」をイメージしたうえで、ベースアップ評価料をどの程度あてにするのかを検討しておくと、より現実的な計画になります。

ベースアップ評価料の基本構造だけ、ざっくり押さえておく

ここまで「考え方」を中心にお話ししてきましたが、制度の大枠も簡単に押さえておきましょう。

  • ベースアップ評価料は、医師・歯科医師を除く、主として医療に従事する職員の賃金改善を条件に算定できる診療報酬上の評価であること
  • 外来・在宅・入院などに区分があり、それぞれ点数や対象職種、施設基準が定められていること
  • 得られた評価料は原則として賃上げに充てることが求められていること

一方で、

  • 具体的な点数
  • 対象職種の詳細
  • 届出様式や期限

などは、診療報酬改定ごとに見直されます。
そのため、最新の数値や手続きについては、厚生労働省や日本医師会などが公表している資料をご確認いただくのが確実です。

【参考】
厚生労働省「令和8年度診療報酬改定におけるベースアップ評価料等について」

自分のケースで整理したい先生へ

情報収集を進めるほど、「結局、自分の場合はどう考えるのがいいのか」「いつ・どの規模で開業するのが良いのか」が分かりにくくなる先生も少なくありません。

FPサービス株式会社の無料相談では、

  • 先生のこれまでの勤務経験や、今後の働き方のイメージ
  • 希望する診療スタイル
  • 人件費・賃上げ原資としてのベースアップ評価料の位置づけ

といった点をお伺いしながら、「先生にとって無理のない開業パターン」を数字ベースで一緒に整理していきます。

オンラインでのご相談も可能ですので、

  • まだ具体的な開業時期は決めていない
  • まずは人件費や収支のイメージだけ持っておきたい

という段階でも、お気軽にご相談ください。

この記事の監修者 椎原 正

FPサービス株式会社 代表取締役
FPサービス株式会社創業者。中小企業診断士(経済産業大臣認定・国家資格)。
クリニックの開業および経営コンサルティングに長年携わり、事業計画策定や資金調達、
開業後の経営支援まで幅広くサポートしている。著書に『クリニック開業[実践]ガイダンス』
『<決定版>クリニック開業ガイダンス』(いずれも現代書林)があり、累計4,400部を突破。
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