医療法人化の手続きと流れを完全解説|クリニック専門コンサル会社監修
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医療法人化は、節税・事業承継・信用力向上など多くのメリットがある一方、申請から認可まで約6ヶ月、設立登記や各種届出まで含めると13のSTEPにわたる複雑な手続きが伴います。書類の不備や捺印の遅延、金融機関との交渉など、準備不足が原因で申請を一度見送ることになるケースも少なくありません。
このページでは、法人化を検討している開業医の先生に向けて、医療法人設立の流れをSTEPごとに解説するとともに、実際に起きたトラブル事例もご紹介します。
目次
【STEP1】医療法人の申請時期の確認
医療法人の設立は着手から認可まで6ヶ月ほどかかる長い手続きになります。
申請先はクリニック所在地の都道府県で、申請時期については各都道府県で異なっておりますので、まずは法人設立の申請時期の確認をする必要があります。
一般的な申請時期は、春に申請を行い、夏頃に法人設立の認可もしくは、秋に申請、年明けに認可という年二回が標準的スケジュールになっています。地域ごとの具体的な日程の確認は各都道府県のホームページ等で確認することができます。
【STEP2】医療法人の必要書類の準備
医療法人設立に申請に必要な書類等一式は、申請時期に各都道府県から配布される設立の手引きなどで確認できます。
これらの書類等は大きく分けると2つに分けられます。
クリニック開業時にすでに作成済みのもの
クリニック開業時にすでに作成済みのものは「人」「モノ」「お金」に分けられます。
その他各都道府県から配布される医療法人設立の手引きに載っている必要書類以外にも、都道府県の担当者から資料が請求される場合があります。
「人」関連のもの
- 役員(理事、監事)、社員になる方の印鑑証明と履歴書
- 医師免許証の写し
「モノ」関連のもの
- クリニック開業の際に提出した開設届
- 現在の診療所の図面など
- リース物件の契約書
※リース契約を法人名義で引き継ぐことへの相手方の承認書類も - 不動産の謄本や賃貸借契約書
「お金」関連のもの
- 借入契約書及び支払い予定表(開業時の設備投資の支払いが残っている場合)
- 支払った負債の根拠書類(工事請負契約書や領収書など)
- クリニックの過去2年間の収支実績表
- 過去2年分の確定申告書
医療法人化を申請するために新たに作成するもの
医療法人の設立申請時には、新たに下記の書類作成が必要になります。
- 医療法人設立の認可申請書
- 医療法人の定款
- 法人設立者(院長)の経歴書
- 役員就任承諾書
- 法人後の2~3ヵ年の事業計画書
- 財産目録
- 予算書
- 医療法人設立を決定した際の設立総会議事録
- 社員および役員名簿 など
【STEP3】医療法人の仮申請
医療法人設立認可申請は、最初に仮申請を行い、次に本申請へと続きます。
仮申請で提出した医療法人設立申請の書類一式は、仮申請後の都道府県担当部署との協議後、必要な修正を加えて完成します。
仮申請とはいっても、必ず踏まないといけない手続きの一つです。
仮申請時に申請しないと、本申請には進めません。
下記の点に注意しましょう。
仮申請の申込期間
仮申請が実質的な医療法人設立の申し込み期間となります。
仮申請の受付期間に申請を行わなかった場合、次回の期間まで法人設立申請ができなくなってしまうので注意する必要があります。
本申請に必要な書類の準備
仮申請時に、本申請に必要な書類一式を揃えて提出します。
公的証明書類(謄本や印鑑証明など)の写しも提出しますが、申請書類一式への捺印は不要です。ですが、本申請の際には申請書類に捺印が必要になるので、仮申請の時期から、捺印が必要な関係者に対して、説明・連絡をしておくと法人設立申請の進行がスムーズになります。
【STEP4】医療法人の事前協議
医療法人設立の仮申請で提出した設立認可申請書は、提出後の都道府県との事前協議によって内容が完成します。
都道府県側からは下記のような指示や確認が入ることがあります。
- 提出書類の不備や内容のチェック及び医療法人設立申請書類の修正、必要な資料の追加指示
- 医療法人設立申請の詳細把握と審査のため、保健所などの関係機関への照会や申請者(院長先生)に対する面接
医療法人設立を申請する方は担当部署からの指示に基づき、必要な修正を加えて、設立認可申請書類を完成させます。完成した書類一式に必要な捺印をして本申請時に提出を行うことになります。
【STEP5】医療法人の本申請
医療法人設立の仮申請で提出した設立認可申請書は、提出後の都道府県との事前協議によって完成します。この完成した書類に捺印をして提出を行うのが本申請です。
捺印が必要な関係者は多いため、事前連絡・相談が大切です。
医療法人の設立時には、各種契約を院長先生個人名義から医療法人名義へ切り替えることを承認する書類に捺印してもらう必要があるため、捺印が必要な関係者は多岐にわたります。
下記に一般的な関係者の例をご紹介いたします。
- 医療法人の役員や社員になる予定の方
- 開業資金を借入れた銀行
- 医療機器などのリース契約先
- テナントのオーナーなど
捺印をした法人設立認可申請書類が本申請の受付期間に間に合わなければ、医療法人設立申請は次回の申請受付期間まで約半年間待つことになってしいます。
提出期限に間に合わせるためにも、必要資料の準備、捺印の必要な関係者に対する連絡・相談は早めにしておくことが重要です。
【STEP6】医療法人の認可
医療法人設立の仮申請から事前協議によって完成した認可申請書類は、本申請で受付されると、医療審議会の調査審議を受けます。
医療審議会は、都道府県に設置される諮問機関であり、医療法で定められた事項や知事の諮問に応じ、医療の提供に関する重要事項の調査審議を行います。
医療審議会が、医療法人の設立認可申請に対して調査審議をした結果、「認可に特に問題無し」との答申をすると、申請先の都道府県から、知事の名で医療法人設立認可書が送付されます。
医療法人設立認可を受けた段階では、医療法人は設立されていません。
認可後、「法人設立登記」を行うことで、医療法人が誕生することになります。
【STEP7】医療法人の登記
医療法人の設立認可を受けた後、医療法人設立の登記申請書類を作成し、2週間以内に所管の法務局(登記所)で医療法人の設立登記をしなければなりません。(医療法第43条、組合等登記令第2条による)
医療法人がを行う主な設立登記事項
- 法人の名称
- 事務所の所在地
- 法人成立の年月日
- 法人の目的等
- 法人の資産の総額
- 存立時期または解散の事由を定めたときは、その時期または事由
医療法人が行う変更登記
医療法人の設立後に変更が起きた場合は、その都度「登記事項変更登記」を行い、所轄の都道府県に「登記事項変更登記の完了届」を提出する必要があります。
- 資産総額の変更 (毎事業年度の決算後、医療法人の資産総額を登記します)
- 理事長の変更(名前や住所、任期満了に伴う改選を経て再任された際も変更が必要です)
- 定款(寄付行為)変更認可を受けた登記事項の変更
- 事務所所在地の変更
「資産総額の変更登記」は毎年必ず行い、「理事長の変更登記」は任期満了による理事長改選のある年(通常は2年に一度)に必ず行い ます。
【STEP8】医療法人の施設使用許可の申請
使用許可申請とは
使用許可申請とは、入院施設を備える有床診療所を開設する際、都道府県から診療所の使用許可を受けるための申請のことです。
診療所の使用許可を受けた後でなければ、患者様を入院させることはできません。
無償診療所では「開設許可申請」のみ必要ですが、有床診療所を開設する場合は開設許可と併せて、診療所の使用許可も受ける必要がありますので、「使用許可申請」と「開設許可申請」を併せて行います。
診療所を開設した場合は、開設後10日以内に都道府県に「開設届」を届出ることになっていますが、有床診療所の開設の場合は、診療所の開設届の届出前に、使用許可(医療法人の場合は開設許可も)を受けておく必要があります。
【STEP9】個人の廃院届けと医療法人の開設届け
個人事業の診療所が医療法人化すると、今までの診療所を廃院し、医療法人としての医療機関を新規開設するという扱いになります。
個人の診療所の廃院と医療法人としての医療機関の開設申請手続きの流れは以下の通りです。
- 保健所へ医療法人としての医療機関の開設許可申請書を提出します
- 保健所長もしくは都道府県知事・市長名での開設許可が出されます
- 開設許可の通知を受け取った後、個人診療所の「廃止届」を提出し、廃院手続きを行います
- 医療法人としての医療機関の「開設届」を保健所に提出し、開設手続きを行います。
医療法人としての医療機関の新規開設に伴い、個人診療所の頃に受けていた保険医療機関指定や、基本診療科や特掲診療科の施設基準等の指定も新たに受け直す必要があります。
該当があれば、生活保護法や難病指定医療機関の指定申請も併せて行います。
【STEP10】銀行の法人口座開設
医療法人化をする際、新しく医療法人名義の銀行口座を開設する必要があります。
これは、医療法人化によって、「個人の収入」と「法人の収入」を明確に区別して管理する必要があるためです。
医療法人名義の口座開設には「法人謄本」と「法人印鑑証明書」、「定款」が必要です。
「法人謄本」と「法人印鑑証明」は、法人認可後の法人設立登記完了をした後に取得できます。
【STEP11】厚生局の手続き
医療法人の設立認可後、登記を経た上で個人の診療所を廃院し、医療法人として新しく医療機関の開設を行います。
このとき、個人診療所の時の届出や指定は、廃院に伴い引き継ぐことができないため、法人の医療機関として保健所への開設手続きと、厚生局への保険医療機関指定を改めて申請する必要があります。
「保険医療機関指定」の申請先は、医療機関の指定・指導・監査や保険医の登録等の業務を行う厚生局(東京都の場合は関東信越厚生局 東京事務所)となります。
医療法人は遡及申請となりますので、個人診療所から期間を空けることなく保険医療機関指定を受けることができます。
また、保険医療機関指定申請以外にも、該当があれば、基本診療科や特掲診療科の届出も行います。
【STEP12】保健所からの指定や各自治体との契約
医療法人を設立すると、個人の診療所を廃院し、法人としての医療機関を新たに開設したという取り扱いになります。
個人の診療所の際に受けていた、公費負担医療制度に関連する指定の再申請や、都道府県や市区町との間で結んでいた公費負担医療に関する契約も、再度契約する必要があります。
これらの指定や契約は、都道府県や市区町村により、扱いが異なりますので、確認をしておく必要があります。所属する医師会が保健所の手続きを行う場合もあるので、医師会の会員となった時点で適用できることもあります。
主な制度の一例
- 生活保護法に基づく医療の実施
- 乳幼児医療対策事業に基づく医療の実施
- 感染症予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律に基づく医療の実施
- 予防接種個別接種業務の受託
- 難病指定の公費負担医療の実施
【STEP13】税務関連の手続き
医療法人設立を登記すると税務関連手続きとして、法人としての事業開始届の届出が必要です。事業開始届とは、税務署と各都道府県税事務所に提出する下記の届出のことを言います。
税務署への届出
- 法人設立届出書
設立した日から2ヶ月以内に定款の写しや登記簿謄本などの必要書類を添付して提出します。 - 棚卸資産の評価方法・減価償却資産の償却方法の届出書
最初の確定申告の提出期限までに提出します。 - 給与支払い事務所等の開設届出書
設立の日から1ヶ月以内に提出をします。 - 青色申告承認申請書
設立の日から3ヶ月以内、またはその事業年度終了日のいずれか早い日までに提出をします。
各都道府県税事務所への届出
- 法人設立申告書
設立の日から3ヶ月以内、またはその事業年度終了日のいずれか早い日までに提出をします。
医療法人設立時のトラブル例
これまで弊社で受けた医療法人設立時の相談事例についてご紹介します。
開業時の個人借入を、医療法人へ引継ぐことが出来なかった事例
負債の法人引継は大きなメリットになり医療法人設立をする上ではぜひ進めるべき事項です。しかし負債の引継が認められない場合があります。具体例を2点あげます。
1.必要書類が足りない
契約書や支払いを行った証拠書類を医療法人設立認可申請書に添付しなければなりません。
具体的に下記が必要になります。
- 内装、施工業者…見積書、内装工事請負契約書、請求書(着手金・残金)、領収書
- 医療卸、医療機器メーカー…医療機器注文書、請求書、領収書
- 大家…敷金預り証(もしくは敷金領収書)
- 金融機関…金銭消費貸借契約書、返済予定表
上記の書類原則一式が必要になります。
幸い、各業者とも書類の再発行や業者控え写しの譲り渡しに応じてくれます。
書類の有無の確認、紛失している場合は関連業者との事前協議が必要になります。
2.金融機関の決裁がおりない、間に合わない
1の項目で挙げた必要書類がそろっていたとしても、負債引継に関し「承認書」に金融機関の捺印が必要になります。
各金融機関によりますが、1~3週間ほど捺印の決済期間があります。大きな金融機関ほどその決済期間が長引く傾向にあります。
医療法人設立認可申請書の提出期限は決まっているので、1の書類集めと同時に、金融機関への事前交渉が必要です。開業時と金融機関担当者が変わっていることが多いので、先生が上記の説明をするのはかなりの手間になります。
契約名義を個人から法人へ切り替える「覚書」が完成しなかった事例
覚書が完成しなかったケースでもっとも多いのは、大家の方から捺印が間に合わなかったというものです。捺印に時間がかかることが考えられるのは、下記の場合です
1.大家が大企業の場合
添付する覚書に会社印をもらうことになりますが、大きな企業ほど契約書への捺印に時間がかかります。また契約書の文言に関し、本社の法務部のチェックがおりないという場合もあります。
2.契約関係が複雑な場合
ビルテナントの場合、契約構造が転貸借の場合がよく見られます。
その場合、所有者・貸主・借主(先生)の三者の捺印が覚書に必要になる場合が多いので、 医療法人設立申請の都道府県担当者へ事前確認の上、書類の準備をすすめる必要があります。
医療法人化のご相談は、まず無料相談から
医療法人化の手続きは、書類の準備・都道府県との協議・登記・保険医療機関の再指定など、多岐にわたります。期限を一度逃すと、次の申請まで約半年待つことになるため、早めの準備が重要です。
FPサービス株式会社では、1,000件以上※のクリニック開業・経営支援の実績をもとに、各分野の専門家と連携した医療法人化コンサルティングを提供しています。申請スケジュールの確認から書類作成・都道府県対応・登記・各種届出まで、法人化が完了するまで一貫してサポートしますので、先生が手続きで迷うことなく、安心して診療に専念していただけます。(※経営コンサル804件/開業コンサル203件/2026年3月時点)
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この記事の監修者 椎原 正
FPサービス株式会社 代表取締役
FPサービス株式会社創業者。中小企業診断士(経済産業大臣認定・国家資格)。
クリニックの開業および経営コンサルティングに長年携わり、事業計画策定や資金調達、
開業後の経営支援まで幅広くサポートしている。著書に『クリニック開業[実践]ガイダンス』
『<決定版>クリニック開業ガイダンス』(いずれも現代書林)があり、累計4,400部を突破。
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