医療法人とは?設立のメリット・デメリットと法人化の目安を解説
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クリニックを開業するとき、あるいは開業後の経営が軌道に乗り始めたとき、「医療法人化」という選択肢が浮かび上がります。節税や事業展開、将来の相続対策など、法人化には個人開業では得られないメリットがある一方、注意すべきポイントも存在します。このページでは、医療法人の基本から設立のメリット・デメリット、そして「いつ法人化を検討すべきか」の目安まで、わかりやすく解説します。
目次
医療法人とは
医療法人とは、医療法に基づいて設立された法人です。イメージとしては「医療版の株式会社」が近く、個人事業主として開業した医師が法人を設立し、その法人から役員報酬を受け取る形になります。

個人事業でも自由にクリニックを運営できますが、医療法人と個人事業では税制・法律上の扱いが大きく異なります。経営の選択肢を広げるうえで、法人化の仕組みを理解しておくことは非常に重要です。
医療法人設立のメリット
医療法人化による主なメリットは下記の通りです。
- 節税効果がある
- 事業展開ができる
- 承継・相続対策ができる
- 退職金を低税率で準備できる
節税効果がある
個人事業(所得税)と医療法人(法人税)では税率が根本的に異なります。
| 個人(所得税) | 医療法人(法人税) | |
|---|---|---|
| 最高税率 | 55%(住民税含む) | 約17.59〜27.21% |
所得が高くなるほど個人の税負担は重くなりますが、医療法人では法人税率が抑えられるため、手元に残るお金を増やせます。また、以下の節税手法も活用できます。
- 給与所得控除の適用:法人から役員報酬を受け取る形になるため、勤務医と同様に給与所得控除が使えるようになる
- 所得分散:家族を理事に就任させ、理事報酬を分散することで、家族全体の課税額を抑えられる

事業展開ができる
医療法人を設立すると、分院の開設や通所リハビリテーション(デイケア)などの介護事業の運営が可能になります。開業時から将来の事業展開を見据えて計画を立てることで、段階的に医療グループを成長させていくことができます。経営としてのやりがいを感じながら、先生が目指す医療を実現していく手段としても有効です。
承継・相続対策ができる
お子様が医師としてクリニックを継ぐ場合、個人事業では多額の相続税が発生することがあります。一方、医療法人であれば理事長の変更手続きのみでクリニックを承継でき、相続税の負担を大幅に軽減できます。長期的なライフプランを踏まえた対策として有効です。
退職金を低税率で準備できる
所得分散を活用しながら法人内で資産を蓄積し、最終的に退職金として受け取ることが可能です。退職金には控除が適用され、残額の1/2のみが課税対象となるため、非常に低い税率で受け取れます。個人開業医では退職金の準備が難しいことを考えると、これは法人化の大きな強みです。

参考:国税庁 退職金と税 退職金にかかる税金 所得税及び復興特別所得税の源泉徴収税額の計算方法
https://www.nta.go.jp/publication/pamph/koho/kurashi/html/02_3.htm
医療法人設立のデメリット
医療法人化による主なデメリットは下記の通りです。
- 事務処理が煩雑になる
- 役員報酬が固定される
- 社会保険への強制加入
事務処理が煩雑になる
法人設立の手続き自体に加え、毎年の事業報告書作成や理事会議事録の作成など、管理業務が増加します。事務負担を理由に法人化をためらわれる先生も少なくありません。
役員報酬が固定される
法人化すると、期内の役員報酬は変更できません。個人事業のようにその月の収益をそのまま手取りにすることはできなくなります。ただし、使える経費の幅が広がるため、実質的なデメリットとなるケースは少なく、期ごとに報酬額を見直すことも可能です。
社会保険への強制加入
役員・従業員ともに健康保険・厚生年金への加入が必須となり、法人と従業員双方の金銭的負担が増します。ただし、医師会に加入している場合は医療法人化後も医師国保を継続できるケースがあり、保険料が割安になることもあります。
医療法人化を検討する目安
法人化は義務ではなく、個人事業のままクリニックを続けることも可能です。ただし、次の収入基準に達したタイミングが法人化を真剣に検討するサインです。
- 社会保険診療収入が年間5,000万円を超えた
- 自由診療を含む総収入が年間7,000万円を超えた
なぜこの数字が目安になるのか
個人事業の医師には、租税特別措置法26条により「概算経費」を使った節税が認められています。実際の経費を細かく計上せずに、収入に応じた一定率で経費を算出できる制度です。
| 社会保険診療報酬 | 概算経費の計算式 |
|---|---|
| 2,500万円以下 | 診療報酬収入 × 72% |
| 2,500万円超〜3,000万円 | 診療報酬収入 × 70% + 50万円 |
| 3,000万円超〜4,000万円 | 診療報酬収入 × 62% + 290万円 |
| 4,000万円超〜5,000万円 | 診療報酬収入 × 57% + 490万円 |
(例)社会保険診療報酬が4,000万円/実際の経費が2,000万円の場合
概算経費:4,000万円 × 57% + 490万円 = 2,770万円
→実額より770万円多く経費計上できます。
しかし、診療報酬が5,000万円を超えると概算経費の適用が認められなくなります。このタイミングこそが、医療法人化を検討する現実的な目安です。
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この記事の監修者 椎原 正
FPサービス株式会社 代表取締役
FPサービス株式会社創業者。中小企業診断士(経済産業大臣認定・国家資格)。
クリニックの開業および経営コンサルティングに長年携わり、事業計画策定や資金調達、
開業後の経営支援まで幅広くサポートしている。著書に『クリニック開業[実践]ガイダンス』
『<決定版>クリニック開業ガイダンス』(いずれも現代書林)があり、累計4,400部を突破。
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